□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2015年10月5日第817号 ■ ============================================================= 新幹線売り込み失敗とシリア難民問題に見る政治主導のなさ ============================================================= 集団的自衛権の行使容認と安保法案強行採決は、まさしく安倍首相の悪しき政治主導のなせるわざだ。 外務官僚も防衛官僚もそして内閣法制局の官僚たちも、多くの良識ある者たちは内心反対していたに違いない。 しかし人事という最強の鞭をふるい、それに従う一部の官僚を徹底的に抜擢して、その他の官僚を従わせた。 安倍首相が間違っているのは、この政治主導を、間違ったところで使い、正しいところで使わないところだ。 インドネシアに対する新幹線売り込みで日本は中国に敗北した。 その理由を10月3日の日経新聞がその社説で見事に指摘していた。 遅れて割り込んできた中国に負けたのはなぜか。それはインドネシアの財政負担を少なくする日本の援助条件が、中国にくらべて格段に見劣りしたからだ、そして日本が十分な条件を提示できなかったのは、日本の政府援助条件を度外視したオファーが出来なかったからだ、と。 まさしくその通りである。 公的援助の原資はつまるところ国民の税金である。だから経済的合理性を無視した大盤振る舞いの援助は、日本は出来ないというわけだ。 この事は、まさしく菅官房長官が、中国案は理解しがたい、常識では考えられない、と捨て台詞を吐いた事に通じる。 しかし、これは財務官僚の発想だ。 政府開発援助を長年担当してきた私はよく知っているのだが、この財務官僚の発想で援助を行う限り、日本の援助は外交的効果を達成できない。 それどころか、受け入れ国に何のための援助なのかと不満を抱かせてしまう事がたびたびだった。 財務官僚が税金の無駄遣いをいうなら、他にいくらでもそれを改めるべき政策はあるはずだ。 それを放置しておいて、今度のインドネシア新幹線の売り込みで中国に負け、日本の技術や企業の競争力を無駄にする。 これこそ政治主導のなさによる国益喪失である。 もうひとつ。シリア難民の受け入れ問題がある。 今度のシリア難民については、私は日本が欧米のように受け入れをオァーする必要はなく、財政援助で十分だと思っている。 生死がかかっている今度のシリア難民の中で、わざわざ日本まで来たいと考える者はまずいない。 彼らが日本に来ても幸せになるとは思えない。 しかし、以前から日本に来て難民申請をしていながら拒否され続けているシリア人は別だ。 かれらは、法務官僚の主導する厳しい難民基準の壁に立ち往生をしている。 いまこそ政治主導で例外的に彼らに難民許可を与えればよかったのだ。 そうすることによってシリア難民受け入れに少しでも貢献した事になる。 大した数ではないし、これらシリア難民の受け入れは日本にとっても彼らにとってもプラスになるはずだ。 このような発想は政治主導でなければ絶対に出て来ない。 安倍首相が一言命令すれば実現可能なのである。 安倍首相に欠けているところは、その政治主導力を対米従属一辺倒で発揮するばかりで、正しい政治主導が出来ないところである(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)