□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年8月1日第583号 ■ ============================================================== シリア情勢の悪化が見事にあぶりだした自衛隊PKO派遣の矛盾 ============================================================== 7月31日の産経新聞は「自衛隊派遣地域でも戦闘が始まった」という 見出しの下に、政府は8月7日にも閣議決定する予定だった自衛隊のゴラン 高原への派遣延長をためらっているという記事を掲載していた。 ついにシリア軍と反政府軍の戦闘がゴラン高原でも続発し始めたのだ。 ゴラン高原とはイスラエルがシリア領を占領し続けて来た地域であり、 1973年の第4次中東戦争の停戦合意に基づき国連兵力引き離し監視軍 (UNDOF)が派遣されてきた区域である。 我が国も遅ればせながら1996年からUNDOFに自衛隊を派遣して きた。 そこがシリア内戦の戦闘地域となりつつあるのだ。 しかしこの記事を読んだ読者が、はたしてどこまで私がこれから書く事 に気づいていただろうか。 産経新聞はこう書いている。 すなわち自衛隊の派遣の前提である「紛争当事者間の停戦合意」は事実 上崩壊した。だから8月7日に閣議決定する予定だった10月1からの 自衛隊派遣の半年間の延長について政府内で慎重論が出ていると。 産経新聞はさらにこう書いている。 紛争地域に自衛隊を派遣することはPKO五原則のひとつである「紛争 当事者間の停戦合意」に反することになると。 確かにそうだ。 だから自衛隊を派遣することを再検討せざるを得なくなった。 そして自衛隊派遣の五原則のひとつに政府が「紛争当事者間の停戦合意」 を含めた理由は憲法9条遵守のためだ。 これを要するに、産経新聞は、内戦が激しくなったゴラン高原に自衛隊 派遣を再延長することは、自衛隊の海外派遣法からみても、その派遣法の 基本である憲法9条の精神からみても、違反するおそれが出てきたので、 政府は8月7日の閣議決定に慎重にならざるを得ないと書いているような ものだ。 そしてその産経新聞の記事を読む読者も、てっきりそう思って読むだろう。 実際のところ、もし閣議決定が見送られれば、政府や防衛省はそう説明 するに違いない。 しかし本当の理由はそこにはない。 それを書くのがこのメルマガの目的である。 本当の理由は、自衛隊の海外派遣は決して危ない所に派遣しないという 暗黙の了解が政府と防衛省にあるという事なのである。 1974年の停戦以来、シリアとイスラエルの交戦はなく、以来ゴラン 高原への国連PKO派遣は、世界で最も安全な紛争地域への国連PKOの 派遣と揶揄されてきた。 だからこそ政府は世界に遅れておもむろに1996年から自衛隊を ゴラン原に派遣し始めた。 そしてもはやその必要はとっくになくなっているのに、政府は半年ごと に閣議決定を繰り返しゴラン高原への自衛隊派遣を「自動延長」してきた。 それは、命を犠牲にしてまで国連平和維持活動に参加して国際平和の 実現に貢献しようとする崇高な覚悟から来ている政治決断ではない。 UNDOFへの参加という名目の下で、予算と権限を確保しようとする 防衛相と自衛隊の内部事情に基づく派遣に過ぎないのだ。 だからこそ派遣の大前提に、その地域の治安の良さがあげられるのだ。 予算と権限は失いたくないが自衛隊にもしものことがあったら大変だ。 すべてを失う。 政治責任を取らされる。 これである。 自衛隊の海外派遣の欺瞞がここにある。 それまで当たり前のように延長が繰り返され、防衛相と自衛隊の利権と 化していたゴラン高原への自衛隊派遣が、シリア内戦の悪化で困難になって きたということだ。 産経新聞の記事はこういう見方で読むのが正しいのである。 私はさらにこう思う。 一度手にした利権はそう簡単には手放せない。 たとえ8月7日の閣議決定が延長されても、ゴラン高原への自衛隊派遣は 決して終わることはない。 シリア情勢が安定するようになれば再派遣は行われるのだ。 今や当たり前のように海外派遣が行われている自衛隊であるが、それは 決して紛争地域へ国際貢献のために命がけで派遣するという崇高なもので はない。 ましてや憲法9条を守ろうとするからではない。 自民党政権がそうであったように、政権交代を果たした民主党政権もまた、 対米追従や自己保身のために憲法9条などいつでも破ってきた。 都合のいい時だけ憲法9条を持ち出すのはご都合主義の極みである。 憲法9条のこの上ない冒涜である。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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