□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年7月27日第572号 ■ ============================================================== シリア情勢の深刻さを理解できない日本 ============================================================== レバノンの友人の一人とメールでやりとりする機会があった。 その時の彼の言葉は、「どうだ、わかったか。米国のイラク攻撃が 中東に最悪の結果をもたらすとはこういう事だったのだ」というもの だった。 私がレバノンで大使をしていた頃、米国がイラクを攻撃しようとした。 その時レバノンの事情通は皆こう言っていた。 米国がサダムフセインを倒すのは一日でできる。しかし米国がイラク を安定化させることは出来ないだろう。混乱が最小限にとどまる事を願う ばかりだ。しかし最悪の場合は中東全体が戦争になる、と。 それらの情報を私は日本政府に送り続けた。 米国のイラク攻撃を止めさせよ、たとえそれが無理でも日本は米国の イラク攻撃を支持してはならない、と。 それから米9年半が経ち、米軍が戦果を誇って撤退し、安定するはずの イラクで7月22日、死傷者100名を超す多発テロが各地で起きた。 この衝撃が米国に与えた衝撃は計り知れないほど大きかったに違いない。 アフガン・パキスタン情勢の混迷はいうまでもない。 イスラエルのイラン核施設攻撃の危険性は高まるばかりだ。 これらはすべて米国のイラク攻撃がもたらした「最悪の事態」である。 しかし、レバノン人たちのいう最悪の情勢とは、中東の春に見られる 中東各国の独裁政権の崩壊から来る混乱であり、その最大のものがエジ プトのムバラク政権の崩壊であり、その最悪のものがシリアのアサド政権 崩壊なのである。 アサド政権の崩壊とその後の政権次第では、レバノン、イラク、サウジ、 エジプトなどで内戦が起きる。それにパレスチナが呼応する。 いつか来た道だ。 これこそがレバノン人にとっての米国のイラク攻撃がもたらした最悪の シナリオだったのだ。 しかし、私がこのメルマガで書きたいことはそのことではない。 日本のメディアも有識者も、そして日本政府も、そんなシリア情勢を正 しく把握している者は一人もいないという悲しさだ。 それを象徴するような記事をきょう7月27日の毎日新聞に見つけた。 西川恵専門編集委員の手になる「金言」という論評はこういう書き出し 出始まる。 「駐シリア大使(2006年―2010年)を務めた国枝昌樹氏(66) は外務省を退官した今もシリア情勢をフォローする。アサド政権側の動向 を知る上で大いに参考にしてきたのが国営通信SANAの英語版サイトだ。 しかし最近はサイバー攻撃を受けて、閉鎖されている事が多い・・・」 そう書いた後で西川氏は国枝氏の言葉を引用し、「アラブの春」は情報 戦だ、シリアは「シリアに民主化を」という情報戦に負けて追い詰められ たのだ、などと書いている。 大きな間違いだ。 国枝氏は私の一年後輩に当たる元外交官だ。 外務官僚には珍しい好人物だが残念ながらシリア大使としては失格だ。 シリアの国営通信では何も本当の事はわからない。 だからシリア情勢はレバノンのメディアを通じて入手するとういうのが 今も昔も有効な方法である。 レバノンは中東で唯一の情報入手のできるオブザベーションポストなの である。 アサド政権の崩壊は情報戦に負けたのではない。 情報を遮断して国民を弾圧してきたその悪政が、情報開放によって国民 が目覚め、命がけでアサド政権に立ち向かったから崩壊したのだ。 もはやアサド政権は一国もはやくみずから身を引くことが中東情勢の 安定化にとって最善である。 それにも関わらず保身にこだわり、ロシア、中国と結託していたずら に犠牲者を増やしているのである。 アサド政権を擁護する一片の正論もない。 アサド政権後の中東情勢を自らに有利に運ぼうとしてシリア情勢に 有効な手を打てない欧米とロシア、中国の駆け引きは、世界の平和の敵 である。 一国もはやくこれ以上の犠牲者を防ぐこと。 いま国際社会が急ぐ事はこれしかない。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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