□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月20日第818号 ■ ============================================================= 日本だけが歓迎する米国のアジア進出 ============================================================ 今度の一連のアジアサミットをどう評価すればいいか。 それは一言でいえば、対米従属外交に終始してきた日本が、ついに アセアンまでも失ってしまったという事だ。 決して、大手メディアが馬鹿の一つ覚えのように書きたてる、「アジア をめぐる米中対立」であるとか、「米中の間に挟まれる日本外交の腕の 見せどころ」などといった事ではない。 今から20年前の1991年に、マレーシアのマハティール首相(当時) は「東アジア経済共同体構想」を提唱した。 これはアセアン諸国だけでは経済発展はおぼつかないから日中韓の三カ国 の力を借りて東アジア地域の経済協力体を作って地域発展しようというもの だった。 そして日本びいきのマハティールの念頭にあるのは日本の経済・技術力 に対する熱い期待だった。 中国の経済力は当時はまだ大きくはなかった。 あの時日本がマハティール構想に積極的に応じていれば今日のアジア における日本の立場は大きく変わっていただろう。 たとえ中国が今日のような大国になったとしても、東アジア経済共同体 づくりに当初から積極的に協力した日本の主導的立場に中国は一目置かざるを 得ないだろう。 しかし日本はこのマハティールの提案を拒否した。 それは米国が入るなと強く圧力をかけてきたからだ。 なぜ米国は日本の賛同を許さなかったのか。 米国の本心は、「東アジアがどのような経済協力体制を築こうとも 構わないが日本がアジアの主導国となることだけは認めない」というもの だった。 この米国の本心を私に教えてくれたのは三井物産のマレーシア支店長 (故人)であった。 歴代の駐マレーシア日本大使よりもマハティールが信頼し、心を許した 日本人だった。 その支店長にマハティールが話したという。 なぜ米国はそれほどまでに私の構想に反対するのかと米国要人に尋ねた ところ、その要人がマハティールにそう言ったという。 その時マハティール首相は米国の度し難い日本に対するう不信を感じた という。 その事をマハティール首相は三井物産の支店長に打ち明けたのだ。 それから20年たって今や米国にとっては当時の日本が中国なのだ。 米国は中国が主導する東アジア経済共同体は許さないのだ。 少なくとも米国抜きの東アジア経済協力体制は認められないのだ。 米国が最近になって急に東アジアに関与してくるようになった理由は そこにある。 しかし、そんな米国は東アジアで主導権を取ることはできない。 誰がどのように強弁しようともアジアはアジアだ。本心では米国を 歓迎はしない。ましてや米国がアジアで主導権を握ることなどできない。 中国はそれを知っている。 米国の煽る中国脅威論に乗らないように、中国はアジア諸国に対し 周到な飴と鞭の政策を進めるだろう。 アジア諸国は中国の脅威は感じても中国と敵対することはない。まして や日本のように中国よりも米国につくなどという国はない。対米従属の 韓国でさえ中国の前には沈黙する。 日本だけだ。手放しで米国のアジアへの関与を歓迎し、日米同盟は アジアの公共財だ、などというピント外れのたわごとを言っているのは。 もはやアセアン諸国は日本の事など念頭にない。中国と米国が敵対する ことのないように願うだけだ。 かつてアセアンは日本にとっては最大の援助供与地域であり日本の影響力 を当然視していた地域だ。 1977年に福田赳夫首相がアセアンを訪問した時は、日本は軍事大国 とならず心と心の触れ合う信頼関係をアセアンと構築すると謳って(いわゆ 福田ドクトリン)アセアンに歓迎された。 いまでは米国の使い走りのようになって中国の軍事大国化をけん制 するばかりだ。 アセアンはそんな日本をうっとうしく思っているだろう。 もはや日本はアセアンさえも失ってしまったということだ。 日本は中国の事を心配するよりも自らの国の事を心配すべきなのである。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)