□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年7月20日第517号 ■ ============================================================== 正しい原発訴訟のすすめ ============================================================== 「そもそも『責任』とか『モラル』とか期待してはいけなかった。 『刑事告発すべきだった』という言葉、原発事故でも教訓にしてほしい」 これは、7月19日の東京新聞「こちら特報部」のデスクメモの中で述 べられていた文章である。天下り官僚を批判した河野太郎の言葉を引用 して、天下り官僚だけでなく、原発行政、原発官僚も訴訟しなければ正し い原発政策は実現されない、と言っているのだ。 賛成だ。そしてこのデスクメモを実践するかのように、原発事故に関す る二つの訴訟の動きが見られた。 一つは、原発撤廃を訴える作家の広瀬隆氏とルポライターの明石昇二郎 氏が7月8日に、東電や官僚、御用学者らを相手取って刑事告発に踏み切 ったことである。これについては週刊朝日7月29日号で広瀬隆本人がそ の理由をくわしく書いている。 二つは、「被災地とともに日本の復興を考える会」と名乗る市民団体が、 7月14日、菅首相、枝野官房長官ら民主党閣僚をはじめ、経産省、原子 力安全委員会、東電を、相手取って、適切な対策を講じなかったことに より住民を被曝させたという理由で告訴したことである(7月15日朝日)。 この二つは似て非なものであり、しかも不十分な訴訟であると私は思う。 すなわち前者は原発を止めさせるのが目的の訴訟であるが、告訴対象に 政府が入っていない。 後者は住民に実害を与えたとして主として菅民主党政権を訴えている。 広瀬氏らの訴訟が左翼的訴訟であるとすれば「復興を考える会」の市民 団体の訴訟は右翼的な立場からの訴訟である。 私は右翼でも左翼でもないが、国を相手に訴訟をしない広瀬氏らの訴訟 は片手落ちであると思う。 原発政策が国策として進められた以上、それを推進してきた歴代の自民 党政権と、それを受け継いだ民主党政権、そしてなによりも今回の原発 事故対応に責任を持つ菅政権を告訴することなく東電や御用学者を訴える のはやはりおかしい。 しかも、このいずれの訴訟も十分ではない。 なぜならば訴訟を起こした者たちが直接の被害者ではないからだ。 私は7月19日の日刊ゲンダイが主張する、「セシウム汚染牛の拡大は菅 政権の犯罪だ。畜産農家は訴訟を起こせ」という訴訟のすすめ、に全面的に 賛同する。 農家に限らず、漁業関係者でも、子供を被曝させた両親でもも、まちがっ た方向に避難させられて被曝した者でも、被害を受けた国民であれば誰でも いいが、かれらこそ大きな声をあげるべきだ。 全国の弁護士たちは彼らの損害賠償を勝ち取るべきだ。。 彼らの犠牲は菅民主党政権の4ヶ月の間の対応のまずさゆえの犠牲である。 その犠牲者がみずから立ち上がり菅政権に損害賠償を求める。 如何なる裁判官もその告訴から逃れることは出来ないだろう。 損害賠償支払い判決を下さざるを得ないだろう。 しかもその損害賠償が税金で済まされてはならない。 責任ある立場にいた政治家、官僚、東電幹部、御用学者らにまず自腹を切 って賠償させる。 ここまでして、はじめて政治家や官僚や東電関係者は正しく責任を取る事 になる。 ここまでしない限り権力者はまともに反省することはない。 国家犯罪は繰り返される。 泣き寝入りさせられるのは国民ということで終わってしまう。 了

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