□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年7月10日発行 第496号 ■ ============================================================== ドル支配の終焉と3通貨体制到来の衝撃 ============================================================== 7月10日の読売新聞連載「地球を読む」で英国の歴史学者ポール・ケネディ が「ドル支配の終焉と3通貨体制到来の衝撃」と題して寄稿していた。 その中でケネディ氏が論じていることは、世界銀行が5月17日に発表した 世界的規模の経済バランスの大変化予測や、最近の米英の代表的な経済専門新聞 や雑誌で見られる論議を通じて、米ドルの一極支配が確実に終わるだろうという ことである。 そしてその後にはドル・ユーロ・人民元の3通貨体制が来るであろうが、そう なれば米国の被る影響は途方もなく大きいものになる一方で、ユーロも人民元も、 ドルが担ってきた準備通貨としての重責を果たすことは出来ず、世界の金融は波乱 が伴うことを覚悟しなければならない、という予測である。 そして歴史学者としての彼の予測は、国際システムが一つの体系から次へと スムーズにバトンを渡した前例は歴史の記録に見当たらない、どの国も勝者になり えず、大きな勝者は利ざやを求めて国境を超えて動く「国家的忠誠心」のない投資家 たちだ、彼らは選べる準備通貨が三つできれば、大喜びするだろう、利益のため にはどこかの国の通貨を破綻に追い込む事が出来るほど売り買いできるからだ、 という。 歴史学者が唱えるこのような評論に、国際金融の専門家たちや世界の指導者たち は答えなければならない。その混乱を防ぐためにドル一極支配に代わるあらたな 国際通貨体制の枠組みを見出す重要性は、サブプライムローン問題の発生や、それ に続くリーマンショックの時に皆が指摘していたことだ。その後のG-8やG-20は、 何を緒やっていたのだろう。 国際通貨制度に素人の私でも素朴にそう思う。 しかし、私がポール・ケネディの寄稿記事でもっとも注目したのはその事では ない。 1997年のアジア通貨危機の際、榊原英資財務官がミスター円などともてはや されて宮沢財務大臣の下でアジアに円通貨圏をつくろうと提案したことがあった。 それは米国の反対であえなくつぶれたが、少なくともあの時は日本の指導者たちは まだ基軸通貨としての円を語る元気があった。 それからわずか十数年。ポール・ケネディが引用した5月17日の世銀の発表では、 ブラジル、インドネシア、韓国、インド、中国、ロシアの新興6カ国が世界経済の 「原動力」になるという。 ポール・ケネディが語る3準備通貨体制は米・ユーロ・人民元である。彼の寄稿記事 の中では円は一言も言及されずじまいである。 我々はこの現実を直視すべきである。 おりから、国連では日本の安保理常任理事国入りの決議案提案が十分な支持を得ら れる見通しが立たないという理由で見送られることになった(7月9日ニューヨーク 発共同)。 いたずらに悲観すべきではない。残念がることはない。 大国志向、経済成長志向で突き進んだ日本が立ち止まるいいチャンスだ。 東日本大震災、原発事故は日本にそれを求めている。 本来の日本に立ち返る時だ。 自由競争主義を否定するのではない。経済発展を追い求めるのもいい。しかし このあたりで国民的合意の下に、共生・福祉社会の実現を本気で目指すべきでは ないか。 それを国民に語る指導者こそ今の日本に求められている。 了

新しいコメントを追加