□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年7月9日発行 第494号 ■ ============================================================== 昭和天皇とワシントンを結んだ男ーコンプトン・パケナム ============================================================== また一つ戦後の日米史を教えてくれる本を見つけた。 米国在住のフリージャーナリスト青木冨貴子著の「昭和天皇とワシントン を結んだ男」(新潮社 2011年5月初版)がそれである。 私は豊下楢彦関西学院大学教授の著書(「安保条約の成立―吉田外交と 天皇外交」岩波新書1996年、および「昭和天皇・マッカーサー会見」 岩波現代文庫2008年)を通じて、昭和天皇が新憲法の下で象徴天皇と して生まれ変わった後も、みずから外交に携わっていたこと、吉田茂を叱責 してまで日米安保条約の早期成立を望み、在日米軍の駐留を望んでいたこと を知った。 それだけでも驚きであるのに、今度は昭和天皇とワシントン(米国政府) を結ぶ民間人(ロビースト)が存在していたのだ。 それを見事に語っているのがこの書である。 戦後史はマッカーサーと吉田茂だけで出来たものではない。 マッカーサーと昭和天皇の会談が戦後史に大きな影響を与えただけでは ない。 ニュースウィーク外信部長のハリーカーンがつくった「アメリカ対日 協議会」というロビー団体が昭和天皇をはじめ歴代の日本の首相と接触し ながら日本の対米政策に関与し、日本を日米安保体制という対米従属の国に していったのである。 そのロビーストの中心がニューズウィーク東京支局長であったコンプトン ・パケナムつまりこの本の主人公である。 著者の青木冨貴子氏はパケナムがニューヨーク本社の上司であるハリー カーン宛てに記した手紙や日記を丹念に解読して、戦後の日米関係が、昭和 天皇―その代理人である松平康昌宮内府式部官庁―パケナムーハリー・カーン ーワシントンという一本の非公式外交チャネルで形作られたことを教えて くれる。 下手な学者の学術書よりもはるかに貴重な労作だ。 昭和天皇外交は、マッカーサーとの占領外交だけではなく、むしろその マッカーサーを排除したトルーマンージョン・フォスター・ダレスの逆コース、 つまり反共軍事同盟外交において大きな役割を果たしていたことがわかる。 それから半世紀。 日本においては政権交代した後も対米従属外交は微動だにしなかった。 それどころか菅首相の対米従属外交は日本の戦後史の中でも特別に際立っ ている。 その理由の一つの答えがこの書の中に見て取れる。 はたして日本の政治家の中から米国から自主、自立した平和外交のできる 人物が現れるのだろうか。そのことが如何に難しいかを教えてくれる一冊で ある。 因みにこの書の中では、日本におけるフリーメーソンが昭和天皇に入会を 求め、昭和天皇が興味を示されたことが言及されている。これも驚きの一つ である。 了

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