□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月14日発行 第104号 ■ ============================================================= 小沢一郎の対米関係に関する発言を危惧する ============================================================== 今日(2月14日)は新聞休刊日だから表には出てこないがネット上 では鳩山前首相の沖縄タイムス社などとのインタビュー記事が流れている。 そのインタビュー記事は、あの歴史的な鳩山首相の辞任劇に至る背景の 裏話を語ったものだが、その中に、あの抑止力発言が実は方便だったと いう驚くべき弁明がある。 すなわち「辺野古に戻らざるを得ない苦しい中で理屈付けしなければ ならず、考えあぐねて『抑止力』という言葉を使った。方便と言われれば 方便だった」と語ったと言うのだ。 これは物凄い発言であるが、これ以外にも驚くべき発言の数々を奔放に 語っている。 それは一言で言えば米国と官僚によって構築されてきた日米同盟は揺る ぎなく、とても自分は崩せなかったというものだ。 私はこの鳩山氏の、あまりにも重大な、しかしあまりにも軽率な告白を、 複雑な思いで読んだ。 日本の首相経験者が日米関係の実態をここまで素直に告白してくれた ことは決して今後の日米関係を考える上でマイナスではない。 しかし同時に、鳩山由紀夫という政治家がいかに情けない政治家である かを満天の下にさらした。 元首相が米国と官僚には勝てないということを国民の前で認めたのだ。 しかし、それは違う。 鳩山由紀夫という政治家に、政治信念がなかっただけだ。それを実現し てみせるというる覚悟がなかっただけだ。 なによりもその政治信念を実現する戦略が皆無で、ともに闘うまともな 同士が一人もいなかっただけだ。 私が鳩山前首相のインタビュー記事を読んで最も驚いたのはまさしく、 このことである。 この事は、言い換えれば、政治信念とそれを実行する覚悟が政治家に あれば、そしてそれを実現する正しい戦略と有能な同士が一人でもいた なら、状況はまったく異なっていたかも知れない、ということだ。 前置きがながくなった。 私が注目したいのは小沢一郎という政治家と彼の対米外交戦略である。 小沢一郎は2月11日、東京都内で開かれた私塾の集まりでしゃべった という。12日の各紙が伝えている。 「いくら米国が軍隊を何万、何十万投入しようが、アフガンでは戦争に 勝てないし、民衆を治めることはできない」、と。 これをルース駐日大使と面会した時主張したという。 大きな間違いだ。 彼の言っている事は正しい。 しかし、それを、オバマ政権に直接言ってはいけない。 オバマ政権と米国は今アフガン戦争を必死で闘っている。 勝てない闘いに気づきながら、それでも米国の覇権と意地をかけて 闘っている。 それを正面から批判することは決して得策ではない。 政権を手にしないうちにそれを言ってはいけない。 小沢一郎が置かれている政治状況が山場に差し掛かっている今、それを 言ってはいけない。 何よりもこのような発言を得意げになって公言してはいけないのだ。 おそらく小沢一郎は鳩山由紀夫以上に側近がいないのだろう。 側近の意見を聞かないのだろう。 正しい対米関係は政治家一人でできるものではない。 国民を覚醒刺させ、その圧倒的な国民の意思を背にして行なうのでなけ れば成功しない。容易につぶされてしまう。 小沢一郎は目の前で繰り広げられているエジプトの市民革命から学ばなく てはいけないのである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)