■□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年6月11日発行 第218号 □■ ──────────────────────────────── ■ 一人相撲している日本の環境外交 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 麻生首相は10日記者会見し、わが国政府の温室効果ガス排出量の中期目標 を発表した。 これが今の日本にとってどれほど大きなニュースなのか分からないが11日の 各紙はこのニュースで埋めつくされている。 それらのすべてに目を通して感じた事は、いつものように、一人相撲の外交に エネルギーを費やしている日本の姿である。 大多数の国民と同様、私は環境問題の専門家でもなければ、環境科学の初歩的な 知識すら持ち合わせていない。 だからそもそも温室ガスを削減することと地球環境の保全との因果関係について、 それが有るのか無いのか、分からない。 もっともこの根本問題については専門家たちでさえ議論が分かれているくらいだ。 そんな状況ではどのような議論をしてみてもはじまらないと思うのだが、 その事はここでは問わない。 今回の麻生首相の発表した中期目標について、麻生首相は、たかが1%と簡単に 言うな、経費だけで10兆円もかかる(6月11日)と言い、大きな政治決断だ と国民の前で得意げに語った。 その一方で野党や環境派はこぞって麻生提案を批判している。温暖化防止の 先頭に立つべき日本の目標としては不十分だ、政策目標は受け入れがたい、と。 しかし、国内でどのような議論がなされようと、忘れてはならないのは、 地球温暖化問題のもっとも重要な事は、京都議定書にかわる新たな正しい国際 合意が達成されるかどうかという事である。その交渉過程で日本が指導的役割を 果たせるかどうかという事である。 そもそも排出ガス削減目標の問題は、それが地球環境の重要性についての真の 国際的合意から生まれて来たものではない。各国の利害のせめぎあい、つまり 環境外交の妥協の中からうまれてきた産物である。 そして日本はその最初の国際交渉の場であった京都会議において、議長国で あったにもかかわらず指導力を発揮することが出来なかった。 欧米先進国を説得できず、開発途上国と欧米先進国の橋渡しが出来ず、挙句 の果てに削減目標となる年次設定や排出権などで不利な条件を飲まされた。 その京都会議の失敗を挽回すべく、基準年を90年から05年に巻き返す事に よって数値目標を8%から15%に膨らませた、そのような受身の態度の所産が 今回の中期目標であった。 しかも、中期目標を発表し、理解を得る本当の相手は、わが国の産業界でも 野党でも環境派でも一般国民でもない。相手は欧米諸国であり、開発途上国で あり、世界である。 もっと端的に言えば、日本の環境外交が行なう事は、環境問題で一番消極的 だった米国を協力の場に引きずり出し、「環境問題は先進国の責任だ」と主張 する開発途上国の代表格である中国に負担を求める、そういう外交だ。 その外交は、今年12月にデンマークで開かれる気候変動防止締約国会議 (COP15)で始まる。しかしその時には麻生首相は確実にいない。 本番で活躍することのない麻生首相が、世界に通用しそうもない中期目標を 国内で大々的に発表する。そしてその案をめぐって国内で一大論争が繰り広げ られる。 私が、日本の環境外交は一人相撲をしている時ではない。 ──────────────────────────────────── 天木直人のメールマガジン 2009年6月11日発行 第218号 発行者:天木直人 著者ブログ: http://www.amakiblog.com/ 読者の皆様からのメールをお待ちしております。

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