■□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年6月2日発行 第207号 □■ ──────────────────────────────── ■ GMの破綻とトヨタの米国化 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 6月1日朝(日本時間1日夜)、ゼネラル・モーターズ(GM)は米連邦 破産法11章の適用を申請し、経営破綻した。 やはり今日のメルマガではこの事について書かざるを得ないだろう。歴史的 瞬間である。昨日でも明日でもなく、今日書かなくてはならない。 1997年から2000年のほぼ三年間、私はデトロイトの日本総領事を つとめた。今振り返って思うと、米国自動車産業界が今日の崩壊に向かって 突き進む運命の道程の中で、最後の線香花火を輝かせていた時期だったと思う。 私はいい時期に勤務させてもらったという事だ。 確かに私の外交官人生の中でも、思いで深い三年だった。GM会長のジャック・ スミス(故人)やリック・ワーゴナーと談笑した思い出が蘇る。米国自動車産業 に生きるデトロイトの米国人たちとのつかの間の生活が目に浮かぶ。 GMのニュースがテレビで流れるたびに映し出されるGM本社ビルは、私が 毎日通った日本総領事館のある建物だ。 暴動と廃墟の町デトロイトの復活を夢見てフォード二世が1977年に建てた ルネッサンスセンター。それをGMが1996年に買収し、世界のGMの本社と して移動してきたのは私が総領事の時であった。 テナントをすべて追い出そうとしたGMに頼み込んで同居を許してもらった。 GMの数々の車が陳列されている中をくぐりぬけて日本総領事館に通ったものだ。 書き出せばきりがない自動車産業の街、デトロイトでの勤務時代。そんな センチメンタリズムにひたるのがこのメルマガの趣旨ではない。ここからが 本題だ。 GMの将来を考えた時、私の頭に思い浮かぶのが5月25日の読売新聞の 記事である。 そこには、「トヨタ、GMにハイブリッド技術」、という見出しの下に、 トヨタが自社のハイブリッド技術をGMに供与して経営再建を側面支援する ことについて検討に入ったことが24日分かった、と書かれていた。 この事は何を意味するのか。これから書く事は私の勝手な独断である。誰も そのような事を言うものはいない。書くものはいない。 5月25日といえばGMが破綻する事はもはや誰の目にも明らかになっている 時だ。破綻する事がほぼ確実視されているGMに自社の最重要技術を供与する 事は尋常ではない。大きな遠謀深慮が隠されているに違いない。 読売新聞のその記事は、国営化されたGMへ技術提供する事によりトヨタの ハイブリッド技術が事実上世界標準になるメリットがある、と書いている。 その記事はまた米自動車メーカーが相次いで経営危機に陥ったことで、日米 自動車摩擦が再燃する芽を摘む狙いもある、などと書いている。 頷ける意見だ。しかし私は新聞のそれらの記事をはるかに超えたものを トヨタの動きの中に見る。 それは何か。トヨタはもはや日本企業ではなく、米国政府に迎合する米国企業に なってしまった、ということだ。 それはあたかも米軍再編に協力する事によって米国の日本占領化を甘受する日本 政府の姿とダブって見える。対米従属に徹する日本政府の姿とダブって見える。 米国政府のGM国有化は一時的なものだ。米国政府はいずれGMを競争力のある 世界の自動車企業としてとして再生させなければならない。 そのための鍵は技術力だ。そして再生GMが目指すのは大型車ではなく、環境 重視に大きく舵を切った自動車産業の柱、エコカーである。 その為には日本の技術力は欠かせない。トヨタの技術力を取り込んで世界的 競争に勝ち残るしかない。 その米国の意向をトヨタは先取りをして動いているのだ。 トヨタの今日があるのは米国の自動車産業のおかげである。トヨタがここまで 大きくなれたのは米国の自動車市場のおかげである。 更に言えばGMを破綻に追い込んだのは、詰まるところ日本の自動車産業で あり、その雄であるトヨタなのだ。 トヨタほど米国の顔を見て仕事をしている会社を私は知らない。 かつて日米自動車摩擦が激しかった事、橋本通産大臣がミッキー・カンター USTR代表と自動車輸出自主規制で激しくやりあっていた姿を尻目に、 トヨタは裏で早々と米国政府と手を結んで自主規制を決めた。 つまりトヨタは日本政府以上に米国政府に迎合的なのだ。日本政府よりも はるかに対米従属的なのだ。 トヨタの会長がなぜあれほどまでに小泉首相を支えたか、小泉構造改革の 旗振り役を買って出たか。 それもこれも、トヨタという会社がその意識においてもはや日本人の事を 考える日本の企業ではなく、米国と協調して生き残りを図る米国企業になって しまっている、と考えれば見事に合点がいく。 米国はトヨタにGMを助けさせる。トヨタはその期待に見事に応じる事に より自らもまた再生を目指す。 トヨタはもはや日本の企業ではなく、覇権国家米国の力を背景に、米国政府 の意向と一体となることによって世界制覇を目指す、そういう企業になっている。 GM破綻のニュースを私はそういう思いで聞いている。 ──────────────────────────────────── 天木直人のメールマガジン 2009年6月2日発行 第207号 発行者:天木直人 著者ブログ: http://www.amakiblog.com/ 読者の皆様からのメールをお待ちしております。

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