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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

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「天木直人メルマガ」 第184号 「拉致被害者は死んでいる」と発言した田原総一朗
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□■□■  【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■  天木直人のメールマガジン 2009年5月13日発行 第184号 □■   ────────────────────────────────── ■                「拉致被害者は死んでいる」と発言した田原総一朗  5月12日の読売新聞と産経新聞が書いた。  4月25日未明に放映されたテレビ朝日の「朝まで生テレビ」の中で、 司会者の田原総一朗氏(75)が、拉致被害者の横田めぐみ、有本恵子さん は死んでいると発言したこと、それに対し5月11日、拉致家族が抗議文を 送った事を発表した、ことを。  この番組に出演していた私は、もちろん田原氏のこの発言を聞いていた。 そして内心驚いた。  「拉致被害者は死んでいる」という発言に驚いたのではない。その発言を テレビ番組の中で田原氏が発言したことについてだ。  実は私が田原氏のこの発言を聞いたのはこれがはじめてではない。もっと 言えば、拉致問題に長くかかわってきた自民党の某有力政治家も同様の発言を かつて私にしたことがあった。  しかし、いずれも非公式の会話の中での発言である。今回のように何百万人 もの視聴者に聞こえる形で公言したのは、私の記憶でははじめて。だから 驚いたのだ。  メディアは一斉に報じるだろう。拉致被害者家族からの猛烈な反発が起きる だろう。その結果、田原総一朗氏とテレビ朝日は苦しい立場に立たされる のではないか、瞬間的にそう思った事を思い出す。  しかしそうはならなかった。メディアは報ぜず、拉致被害者家族の反発も 起きなかった。そして二週間が経った。もはやこの田原発言の事を私は 忘れかけていた。  その矢先の12日の新聞報道である。  そしてこの報道記事を読んで、私は拉致問題についての私の基本認識に 誤りがないことを、あらためて確信した。  残された拉致被害者の死亡については政府・外務省の中では、かなり前から 既成事実であったに違いない。  政府・外務省に近い一部の関係者はみなそれを知っていたに違いない。田原 総一朗氏もその一人であったに違いない。  しかし、少なくとも少し前までなら、それを公言する事はタブーであった。 そのタブーがタブーでなくなりつつあるということだ。  それは、もはや拉致問題は政府やメディアにとって静かに終わらたい問題に 成りつつあるということだ。そのように動き出した事を意味するのではないか。  2001年9月の小泉訪朝以来、拉致問題は国民的一大関心事であった。 拉致問題が騒がれていた頃の発言だったらどうだったか。そんな発言を 田原総一朗はできたであろうか。したであろうか。  いや、いまでもこの発言は大手新聞が一斉に取り上げてもおかしくはない 深刻な発言だ。少なくとも表向きは。  しかし、対北朝鮮強硬派である読売、産経の二紙しかこの発言を取り上げ なかった。朝日も毎日も日経も東京新聞も、拉致家族の抗議文の事を知らない はずはない。それでも取り上げなかったのだ。  私が驚いたのは抗議された後の田原氏の発言である。報道によれば田原氏は 次のように対応したという。  「家族の方々の心を痛めたことは大変申し訳ないと思う(が、あの発言は) 事実に基づく明確な根拠がある」(読売新聞)。  「家族の方が抗議される気持ちはよく分かる。しかし、私は事実を言った までです」(産経新聞)。  この悪びれない態度をどう解釈すればいいのか。あたかも政府・外務省が 言えない事を代弁しているかのようだ。既成事実を積み上げて国民の意識を 麻痺させようとしているかのようだ。  さらに言えば、拉致犠牲者の家族や拉致被害者を支援する政治家や活動家の 抗議の弱さである。  田原発言が行なわれて2週間もたってはじめて抗議文を送った事を公表した。 拉致被害者家族も、もはや内心ではあきらめつつあるのだろうか。  拉致被害者を救済するために強硬な制裁措置を求めてきた政治家たちが この田原発言に怒らないという事は、彼らもまた強硬姿勢のポーズをとって 政治的存在感を示そうとしているだけなのか。  国民を救出する責任のある政府・外務省は、世論を甘く見て反発を食らった 反省に立って、もはやリスクを犯してまで拉致被害者の救出に行動を起す気は 感じられない。  それはあたかも、外交努力を続けている振りをして時間をかせぎ、やがて 拉致被害者家族がこの世にいなくなり、国民がそれを忘れるようになる時を、 辛抱づよく待とうとしているかのようだ。  こう考えていくと、田原総一朗の「死んでいる」発言は、まさしく拉致問題の 風化を表していると言えるのではないか。  気の毒なのは、家族と、その思いを共有する純粋で善良な国民たちである。 その人たちの心情を思うと、私は耐えられなしほどつらい。            ─────────  天木直人のメールマガジン 2009年5月13日発行 第184号  発行者:天木直人  著者ブログ: http://www.amakiblog.com/  

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