… … …(記事全文2,943文字)第一章 誤解だらけの街の情報
ウイルスの研究におけるドライとウエット
私は獣医師で、ウイルスの研究者です。1987年、大学3年生の時に東京大学医科学研究所でウイルス研究に従事し始めたので、研究歴は今年で38年目になります。論文デビューは、同研究所の速水正憲先生の下で行われた成人T細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の組換え生ワクチン(天然痘の弱毒生ワクチンにHTLV-1の遺伝子を組み込み、HTLV-1のタンパク質を体内でつくらせるもの)の効果検定を動物で行う研究論文の一員としてでした。
ウイルスの研究といっても研究領域は多岐にわたっています。近年では実験をせずにコンピューターを用いて情報解析だけを専門としている人も多くなりました。このような研究はドライ(dry)、実際にウイルスを扱って実験を行う研究はウエット(wet)と呼ばれます。ドライ、ウエットどちらの研究においても、機器や分析手法の進歩によってより細かいことが研究されるようになりました。例えば、ウイルスの分子と細胞の分子の相互作用やタンパク質の変異による影響などの細かな解析、ウイルスタンパク質の高次構造や、ウイルスの配列情報をもとに系統解析や祖先ウイルスの配列をコンピューターで推定するということも研究対象になっています。
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