… … …(記事全文5,433文字)オーレン・キャス氏とスティーブン・マイラン氏の対談は現代のアメリカの問題を指摘した内容の濃い話だった。
特に
・トランプ関税の効果
・基軸通貨のメリットとデメリット
に関しては、日本のメディアが指摘できない話がつまっていた。
ただ、話が難しい面もあるので、今回は、この二人の対談の中から、トランプ関税と基軸通貨に関して解説したい。補足説明満載で分かりやすく解説するために、「関税とはなにか?」から解説していこうと思う。
まずは、今回の対談の二名の略歴を下記に記す。
https://www.youtube.com/watch?v=0p1cd6avATY
Oren Cass(オーレン・キャス)氏(上記画像左)
アメリカのシンクタンク「American Compass」のチーフエコノミスト兼創設者・執行役員。米国の新保守主義(ニュー・ライト)を代表する経済論客であり、従来の完全な自由放任主義(過度なグローバリズムや市場至上主義)を見直し、国内の労働者・家族・製造業の振興を優先する政策(共通善の経済学)を唱えている。本対談ではホストを務め、関税政策やドルの役割について議論を展開している。
Stephen Miran(スティーブン・マイラン)氏(上記画像右)
元・第2次トランプ政権の国家経済会議(CEA)委員長を務めた経済学者・政策立案者。財政学を専門とし、関税を他国や外国企業への負担転嫁と捉える「最適関税理論」や、国内減税の財源としての活用を肯定的に評価している。一般的な経済学界の教条的な反対論に対し、正統派経済学の理論枠組みを応用してトランプ政権の関税・通商・産業政策の妥当性を論理的に解説・擁護する役割を果たしている。
下記に、二人の対談の内容を解説する。
【関税と「歳入(税収)」の話 】
■ そもそも「関税」って何か?
分かりやすく解説したいので、ここから解説させていただく。
関税(tariff)とは、外国から商品を輸入するときにかける税金のことだ。
たとえば中国から靴を1万円で輸入するときに10%の関税をかけたら、
輸入業者は1,000円を政府に払う。この1,000円が政府の「歳入(revenue/税収)」になる。■ なぜ「関税も税金の一種」として考えると面白いのか?
政府がお金を集める方法(税金)には、主に3つある。
①所得税 … 働いて稼いだお金にかける税
②法人税・資本税 … 会社の利益や投資の利益にかける税
③関税 … 輸入品にかける税
ミラン氏の主張はシンプルで、「軍隊や公共サービスにお金がかかるから政府は絶対に税金を集めなきゃいけない。だったら①②③のどれか
1つだけに頼るより、3つともバランスよく使ったほうが経済への
ダメージが少ない」というものだ。
これを経済学の言葉で「コーナー解(corner solution)」と
「内点解(interior solution)」という対比で説明していた。・コーナー解 = 関税だけゼロにして、所得税と法人税だけで全部まかなう(=極端、偏った状態)
・内点解 = 所得税・法人税・関税を、それぞれ「ほどほど」に組み合わせる(=バランスの取れた状態)1種類の税金だけに頼ると、その税金の「副作用(たとえば所得税なら『働く意欲が下がる』など)」が強く出すぎてしまう。だから関税も税収の一部として組み込んだほうが、経済全体への悪影響(ダメージ)を減らせる、というのが彼の理屈だ。
■ 「関税は外国人にも負担させられる」という論点
これがこの議論のいちばんのポイント。
所得税や法人税は、基本的に「自国民(アメリカ人)」が払う。
でも関税は違う。輸入品に関税をかけると、その負担の一部は
「輸出している外国企業・外国」側にも及ぶ。値下げして対応
せざるを得なくなったりするためだ。
つまり、
所得税を上げる → 負担は100%アメリカ人
関税を上げる → 消費者に値上げで転嫁もされるが負担の一部は外国側が負う
だから「同じ1,000億円の税収を集めるなら、関税を使ったほうがアメリカ人の負担は少なくて済む」というのがミラン氏の主張だ。
これを「最適関税(optimal tariff)」という考え方と呼ぶ。
ただし、関税を上げすぎると、輸入品が減りすぎて経済が縮んでしまうデメリットも大きくなっていく。だから「歳入(税収)が最大化されて、かつアメリカ経済へのダメージが大きくなりすぎない、ちょうどいい関税率」がどこかにある、という話になっていく。
■ 「本当に外国が負担してるのか?」という反論と、それへの反論
ここで従来の経済学者たちは、「関税をかけても、外国が"報復関税"を
返してきて、逆にアメリカの輸出品にも税金がかけられ、結局アメリカも
損をする」と反論してきた。
これに対してミラン氏は、「アメリカは世界最大の消費市場だから
話が違う」と反論する。
・小さな国 → 輸出先を失うと大打撃なので、報復しにくい
・アメリカ → 世界一の「お客さん」なので、報復されても他の国に貿易相手を切り替えやすい。
つまり、アメリカは世界最大の市場であり、アメリカという市場を失うのは大損というという関係があるので、アメリカは報復されず、むしろ相手国が自分から関税以外の壁(非関税障壁)を下げてきた、と主張している。
そして、現にそうなっている。■ 集めた関税収入を何に使ったか
ミラン氏によれば、この関税で得た税収は、"One Big Beautiful Bill
Act(通称OBBBA)"という法律を通じて、
・個人の所得税減税の恒久化
・企業の設備投資・研究開発費を一気に経費計上できる制度
(フル・エクスペンシング)の恒久化
の財源に使われたという。
つまり「関税で集めたお金を使って、働く人や会社にかかる別の税金を軽くした」という構図だ。これを彼は「サプライサイド政策(供給側=生産する側を後押しする政策)」と呼んでいる。
■ まとめ
「政府はどうせお金が必要。それなら所得税や法人税だけに頼るより、関税も組み合わせたほうが、負担の一部を外国に払わせられて、アメリカ人へのダメージも小さくできる」というのが、この部分でのミラン氏の主張の核心だ。
トランプ関税とは、世界最大の市場であるアメリカ最大のメリットを利用した政策だったと言える。
そして、次に「基軸通貨とトリフィンのジレンマ」に関して、補足説明をしながら、ここで何が語られたかを説明していきたい。ここより先は会員登録が必要です。月・水・金に配信中です。(現在、平日毎日更新中)
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