… … …(記事全文4,431文字)経済思想史において、良くも悪くも資本主義の終焉を予言した二人の巨人がいる。一人はカール・マルクスであり、もう一人はヨーゼフ・シュンペーターである。両者は「資本主義はいずれ社会主義的な体制へと移行せざるを得ない」という結論において一致しながらも、そのプロセスに関する見立ては驚くほど正反対であった。
マルクスは、資本主義の本質を「矛盾と搾取」と捉えた。資本家による労働者の搾取が極限に達し、窮乏化した労働者階級(プロレタリアート)が怒りの革命を起こすことで体制は崩壊する―これがマルクスの描いたシナリオだった。もちろん今回、マルクスの話をするつもりもないし、マルクスの事を話す必要性も全く感じない。
これに対し、シュンペーターが1942年の著書『資本主義・社会主義・民主主義』で提示した予言は、はるかに皮肉で、かつ不気味なリアリティを孕んでいた。彼は「資本主義はその成功ゆえに失敗する(自壊する)」と論じたのだ。資本主義を死に追いやるのは、飢えた弱者の怒りではなく、資本主義がもたらした未著有の「豊かさ」そのものなのだという。
シュンペーター経済学の核心は、「創造的破壊」にある。
企業家(Entrepreneur)がリスクを取り、新製品や新たな生産方法、新市場の開拓といった「イノベーション」を巻き起こす。これによって古い秩序が破壊され、経済が新陳代謝を繰り返しながら成長する。これが資本主義の真の原動力である。しかし、資本主義が高度に発展し「成功」を収めると、このダイナミズムは内側から窒息していくと彼は言った。
第一の要因は、市場の寡占化と大企業化に伴う「組織の官僚化」である。初期の資本主義を牽引した、ロマンと冒険心に溢れる「創業者」の時代は終わり、株式市場の発達とともに「所有と経営の分離」進む。結果として組織を支配するのは、失敗のリスクを極端に嫌い、既存のルーティンを維持することに長けたサラリーマン経営者、すなわち「管理職的官僚」となる。かつて経済を揺り動かした企業家精神は消え、イノベーションの源泉そのものが枯渇していくのである。
第二の要因は、資本主義の成功が社会の文化的・精神的基盤を溶かしてしまう点にある。資本主義は信じがたい効率性で社会を豊かにし、高度な教育制度を整え、余暇を持つ膨大な「知識人(インテリ層)」を大量生産する。シュンペーターの洞察の最も独創的な点は、この知識人層の心理分析にある。
彼らは、自らリスクを取って新たな価値を創造(創造的破壊)する能力や度胸は持たない。しかし、他者が引き起こした「破壊」に伴う痛み(格差や失業)を人道主義的な正義感から批判する自由と時間を、資本主義の豊かさによって与えられている。分かりやすく言うと、社会が豊かだから、そのような批判をしながら食っていける。
彼らはメディアや教育機関を占拠し、「競争は悪だ」「安定と平等こそが絶対的正義だ」という世論を形成する。これに同調した大衆の間には、私的財産や自由競争、自己責任といった資本主義の根幹を支える価値観への疑念が広がり、社会は「自動的」に計画化と分配を重視する社会主義的マインドへとシフトしていく。
下記にて、シュンペーターが予言した日本の社会主義化と、経産省DeNA投資の深い闇について語る。
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