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鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#126 コロナワクチンに反対した「原点」に戻れ ~「高市早苗的政治思想」に酔っている人たちへ~

2026年1月14日、高市早苗首相が衆議院を解散する意向を示した。報道によると1月23日に召集される通常国会の冒頭で解散され、27日に公示、2月8日に投開票となる見込みだという。この急襲とも言える動きに危機感を抱いたのだろう、立憲民主党と公明党が衆院選に向けて「中道改革連合」を結成。これにブチ切れた原口一博議員が離党して「ゆうこく連合」の政党化を表明するなど、政治が大きく動き出している。

 

今回の選挙は、「高市早苗的政治思想」を支持するかどうかが、最大の争点になると私は見ている。すなわち、「中国に負けない対外強硬路線をとる」「防衛力を強化し、核兵器保持も辞さない」「強力なリーダシップの下、強い国家を作る」「愛国心を重んじ、反日思想を駆逐する」「自主憲法を制定し、自主独立を果たす」といった国家主義的なタカ派思想に賛成か反対かだ。立憲と公明が「中道」という言葉を選んだのも──創価学会が重視してきた仏教的理念でもあるが──右傾化する政治状況の中で、高市早苗的政治思想と差別化を図ろうとしたからだろう。

 

戦後80年が経ち悲惨な戦争の記憶が失われてしまったことで、理念ばかりで上から目線の「戦後日本のリベラル思想」はそっぽを向かれてしまった。その一方で、日本の国力低下に伴う自信喪失と、強大国となった中国に対する不安感を背景に、高市早苗的な政治思想に共鳴する人が激増した。もともと自民党タカ派に共鳴してきた人たちだけでなく、参政党、日本保守党、国民民主党の支持者の中にも、高市氏に好感を持っている人が非常に多い。

 

実際、朝日新聞と大阪大学の調査によると、「いま選挙があるとしたら、どの政党に投票したいか」という問いに、「自民党」と答えた人がこの半年で4割も増えた。その多くが参政党、日本保守党、国民民主党から乗り換えた人たちだった。つまりは、これらの人たちは自民党の穏健な政策に嫌気がさして別の党に移ったけれど、本質は高市早苗的政治思想の熱烈な支持者なのだ。それが高市氏が首相になったことで、自民党に戻ったということだ。(朝日新聞「高市氏に好感『自民に投票』大幅増 参政などから流入、朝日阪大調査」2025年12月23日 https://www.asahi.com/articles/ASTDG1Q2WTDGULLI00HM.html)。

 

こうした強い政治思想を持つ人たちを中核として、外国人問題などの不安に煽られた人たちや、日本初の女性首相の登場に好感を持ったふつうの人々によって、8割にも迫ろうとする高市政権の驚異的な支持率が構成されていると私は見ている。一方で、自民党自体に対する支持率は30%台に留まっている。つまりは、前首相の石破茂氏に象徴される、自民党の中にある穏健的な勢力は、戦後リベラル思想に対する嫌悪感もあって、敬遠されているということだろう。

 

こうした情勢を鑑みるに、今回の衆院選は自民党が圧勝して、単独過半数を獲る可能性が極めて高い。しかも、自民党内の高市支持派が票を伸ばすのと反対に、穏健派は勢いをなくして自民党の保守強硬路線が強まるだろう。もともと衆院の議席が3と少ない参政党は、ある程度議席を増やすと思われる。しかし、日本維新の会、国民民主党は、自民党に食われて思うように票が伸びないと予想される。つまりは、自民党の一人勝ちになる可能性が高いわけだ。高石氏もそれを見越しての解散であるのは間違いない。

 

そして、立民と公明の「中道改革連合」も、大敗する可能性がある。時事通信の試算によると、前回の衆院選において自民党候補に流れていた創価学会票が立民候補に移れば、小選挙区で自民と立民が大きく逆転することもあり得るという。だが、その通りになるだろうか。公明党系候補者は創価学会票が固いことから、現状を維持できるかもしれないが、立民系候補者は創価学会と手を組んだことで、宗教アレルギーのある一般支持者から反発される恐れがある。それに、野田佳彦代表をはじめ執行部の顔ぶれがまったくフレッシュではない。ジリ貧状態にある立憲民主党は、ますます支持離れが進むと思われる(時事通信「協力奏功なら新党第1党も 30選挙区超逆転か―時事通信試算」2026年1月15日 https://www.jiji.com/jc/article?k=2026011501194&g=pol)。

 

こうして、リベラル左派はさらに勢力を失っていくだろう。2026年1月9日~12日にかけての時事通信の最新の調査によると、残ったリベラル左派政党の支持率は共産党が1.1%、れいわ新選組が0.9%、社民党が0.1%。つまり、すべて合わせても参政党や日本維新の会に届かないのだ(自民党22.5%、立憲民主党4.2%、国民民主党3.6%、参政党3.4%、公明党2.5%、日本維新の会2.3%、日本保守党1.1%、支持政党なし55.2%)。リベラル左派勢力は、もう風前の灯と言っていい(時事通信「高市内閣、支持微増61% 対中姿勢「評価」4割超―時事世論調査」2026年1月15日https://www.jiji.com/jc/article?k=2026011500788&g=pol)。

 

さて、かような現在の政治状況を整理・俯瞰したうえで、医療ジャーナリストである私は何を言いたいのか。それは、コロナワクチンに反対してきた我々の「原点」がどこにあるのかということだ。元々、私は、それほど政治に積極的な人間ではなかった。権力監視を使命とするジャーナリストの端くれとして、政権与党に対して常に批判的な立場をとってきたが、先日亡くなった久米宏さんに象徴されるように、かつては新聞、テレビ、週刊誌といったオールドメディアが、その役割をしっかり果たしてきた。私が何かを言わなくても、プロの政治ジャーナリストたちに任せればいいという気持ちがあったのだ。

 

しかし、コロナ騒ぎが起こって、政治やメディアの状況が一変した。リベラル左派政党とオールドメディアが機能不全に陥り、権力を監視する役割を果たさなくなってしまったのだ。60年近く生きてきた私の感覚からすると、マスク着用やワクチン接種の強要をはじめとする様々な人権侵害や、YouTubeをはじめとするSNS等でのワクチン批判の言論封殺に対して、ひと昔前ならリベラル左派政党やオールドメディアが真っ先に怒りの声を上げたはずだった。そうした「戦前回帰」を感じさせる「同調圧力」や「全体主義」的な風潮を諫めることこそ、リベラル左派政党やオールドメディアの存在意義だったからだ。

 

… … …(記事全文6,183文字)
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