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鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#124「医療を過信しない」ことの大切さ ~新年にあたって読者に伝えたいこと~

2026年、とうとう還暦を迎える。人生も最終章に入ったということだ。医療を取材するようになって、もう30年近くになる。その間に、何千人という医師を取材してきた。ただ医師の話を聴いてきただけではない。その人を医師として信頼できるのか、常に批判的に吟味する姿勢を持って相対してきたつもりだ。医療ジャーナリストとして、その蓄積をどのように社会へ還元していくか。自分がなすべき使命を考え直す一年にしたいと思っている。

 

そんな思いのなかで、私が読者に伝えるべきだと第一に考えているのは、「医療を過信しない」ことだ。世間の大半の人は医療に大きな信頼を置いている。しかし、医師を取材すればするほど、人々が思うほど医療に大きな力があるわけではないことが分かってくる。もちろん、大きな怪我や大やけどをしたとき、脳卒中、急性心筋梗塞、大動脈解離などを発症したとき、ハイリスク分娩で母児が危険なときなど、一刻を争う状況での医療の力は大きい。

 

また、膠原病のステロイドパルス療法や、Ⅰ型糖尿病のインスリン療法、腎不全の透析療法、白血病や悪性リンパ腫における抗がん剤治療や造血幹細胞移植等々、これを行わなければその人の命をつなぐことができないという治療もある。痛みや不安を取るための、がんの緩和ケアなども絶対に必要な医療だろう。したがって、なんでもかんでも「反医療」という発想は絶対に間違っている。

 

しかし、期待するほど医療が役に立っていないことも多い。たとえば新型コロナやインフルエンザに罹ったとしても、ほとんどが薬など使わなくても自然に治ってしまう。不幸にも肺炎や脳症を起こして障害を負ったり亡くなったりする人も一部にいる。しかし、ふつうに健康であれば、ほとんどの人に医療の手助けは不必要なはずなのだ。それに、このウェブマガジンで再三指摘してきた通り、ワクチンも抗ウイルス薬も、重症化を防ぐという確かなエビデンスはない。ところが、流行のシーズンが来るたびに、多くの人がワクチンや薬を求めて医療機関に駆け込んでくる。

 

高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症)などの生活習慣病も同様だ。基準値を大幅に上回っている場合や、困った症状が出ている場合には薬の手助けが必要だろう。しかし、多少基準値を超えたからといって、脳卒中や心筋梗塞のリスクが一気に上がるわけではない。それに、心血管疾患の既往のない人が降圧薬やスタチン(コレステロール低下薬)を飲んだとしても、5年間で100人に1人が脳卒中や心筋梗塞の発症を防げる(発症を3人から2人に減らせる)程度のエビデンスしかない(多くの人、とくに医師たちに、このサイトを見てほしい。https://thennt.com/?s=red)。

 

 にもかかわらず、70代以上になるとおよそ半数が降圧薬を、3人に1人がスタチンを飲むようになる。それがニッポンという国の現状なのだ。「わずかでも効果があるならば、念のために医療に頼るべきだ」という考えもある。だが、ワクチンや薬には、必ず「副作用(副反応)」がある。医薬品には生体の働きを変えたり、細胞を殺してしまったりする力があるからだ。それが無用なものだった場合や、狙った通りに働かなかった場合には、結果として「毒」にしかならない。

 

ワクチンや薬が好きな医師たちはよく、「医療にリスクがあったとしても、メリットが上回るエビデンスがあるから我々は勧めるのだ」と主張する。しかし、全員がメリットを受けるわけではないし、むしろワクチンや生活習慣病の薬は、「治療必要数」(1人の発症を防ぐために何人が使う必要があるか)の観点から見た場合には、リスクだけを被る結果になる人のほうが多くなる可能性が高いのだ。にもかかわらず医師たちには、自分が他者に対して不必要に「毒」を盛っているかもしれないという自覚が、とても乏しいように感じる。

 

患者側も「ワクチン」や「薬」という言葉に幻惑されているせいか、「毒」を体に入れているという自覚に乏しい。産地、農薬、添加物などを気にして食材を選ぶ人が多いのに、なぜか薬に関してはその毒性に無頓着なのだ。「体に入れるもの」という意味では食材も薬も同じであり、むしろ薬のほうが毒性は圧倒的に強い。それなのになぜか、多くの人が医師の言いなりになって、ワクチンを打ったり薬を飲んだりする。患者もスーパーで食材を選ぶときと同じように医薬品を吟味すべきだし、毒物を体に入れることに対して慎重であるべきだと思う。

 

検査についても言っておきたい。これも再三書いてきた通り、健康診断やがん検診の受診者と非受診者を比べる臨床試験がとくに海外で多数行われてきたが、命を延ばすという確固たるエビデンスは得られていない。むしろ、命に関わらない「異常」をたくさん見つけてしまい、それが無用な再検査や治療を増やすきっかけとなっている。いわゆる「過剰診断」「過剰治療」の問題だ。これが50兆円に届こうとしている国民医療費膨張の元凶となっていることも、当ウェブマガジンで連載した「新・医療亡国論」で指摘してきた通りだ。

 

過剰診断・過剰治療と書くと、軽く感じるかもしれない。しかし、これも本当は「傷害行為」だ。たとえば、50歳以上の女性1000人が乳がん検診のマンモグラフィを10年間定期的に受け続けると、乳がんで死亡する人が5人から4人に減る。だが、全てのがんでの死亡数は受けても受けなくても21人と変わらない。その一方で、約100人が「偽陽性」になり、5人が不必要な「手術(部分切除または全摘)」を受ける。これは過去の臨床試験に基づく科学的なデータだ。詳しくは、下記のリンクを見てほしい。(Harding for Lisk Literacy〝Early detection of breast cancer by mammography screening〟https://www.hardingcenter.de/en/transfer-and-impact/fact-boxes/early-detection-of-cancer/early-detection-of-breast-cancer-by-mammography-screening

 

… … …(記事全文6,145文字)
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