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小川榮太郎「批評家の手帖から」

小川榮太郎(文藝評論家)

小川榮太郎

高市政治をどう見るか「広島、国づくり人づくり財団講演会より(最終回)」  日本人は必死になって「日本人」になってきた、ぼーっとしてたんじゃありません。
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以下、極めて重大な内容だから、今回は無料公開する。

前回の最後の20行ほどを踏まえて、※の後から今回の内容に入ります。


西郷は単なる守旧派の巨魁ではない。西洋を最も知る村田新八のような人にとってこそ「真智大略の英雄」であった。少なくとも村田という並外れた俊秀は、ヨーロッパをつぶさに見学したからこそ、西郷だけが明治維新を真に乗り切り得る、唯一の宰相である事を、了知していたと、江藤は見るのです。

なぜなら、その根本的な観点、――精神気魄と政治の結節点――に気付かない限り、どのような弥縫型の近代化も所詮、どこかで破綻する。それは滅びを遅らせるに過ぎないからだ。

 しかし日本近代は西郷を選びませんでした。

 彼に死を与えた。

 それは我々にとって決して過去の話ではありません。

 今、薄氷を踏むように「日本人」である事の最後の局面を綱渡りしている我々に突き付けられた、現実上の、踏み絵なのではないのか。

 私はそうした激動に突き上げられて已まない。(この稿続く)


                  ※

以上、持ち時間もほとんどなくなりました。

この踏み絵を、私たちはどうしたらいいのか。

これはもう講演や文藝の世界の話ではない。

私たちが何を実践するのかという話を最後に少しでも申し上げて終りたいと思います。

日本を再生するために、私は日本平和学研究所というシンクタンクを主宰して政策提言をしつつ、より根源的なテーマに取り組んでいます。

安全保障から経済政策まで色々提言する為の拠点に平和研がなっている。

私はそうした専門家らの作業をお国に繋ぐ為に活動してきました。

しかし、ここで最も重大な話をします。

以下の話を伝えたいがために、今日ここに私は来たんです。

私の、本質的な日本を取り戻すという活動、その根本は国語です。

これは、例えばさっきの『南洲残影』に私が非常に感動したと申し上げましたね。しかしそもそもそれを読みこなせる人はどんどん減っている。これはそんな難しい本じゃありません。しかし、では西郷南洲についてのもっと明治時代に書かれたものは読めるんでしょうか。ほとんど読めなくなっている。い

こうやって、国語が読みこなせなくなったら、日本人はもう歴史から切り離されてしまう。漫画にして分かりやすくして理解したらいいと言う。いや、漫画にしたらもうそれは歴史じゃない。それは別物になるんです。

それはそうでしょう。万葉集を漫画にしたってしょうがないんです。川端康成を漫画にしてもしょうがないんです。それはそのままの国語としての美しさ、国語としての深さが魂に響かないんなら、もうそこで日本民族の魂の連続性が切れてるのです。

皆さんは幾ら申し上げてもその事の恐ろしさが全然わからない。

だから結局、こういう話を聞き流してしまう。

ここに私の非常に憂鬱な、現代の日本と関わるのをやめたくなる根本がある。

国語を疎かにしたら、日本人は日本人じゃなくなるのです。

人麻呂、聖徳太子から、信長、秀吉、家康から、西郷隆盛から、鷗外、漱石、露伴からね。そういう人たちの体現している日本人というのを今、誰が継いでますか。

今の若い子なんかを見ると性質はとても純粋な子が増えている。

それはいい事だけれども、それだけなら縄文時代からのヤポネシアンと変らない。

島国のお人よしの善良な人々に戻っちゃったら、それは日本人じゃないのです。

日本人は必死に、歯を食いしばって日本人になろうとしてきたのです。

とてもとても無理して踏ん張ってきたんです。

聖徳太子が、十七条憲法作って日本人のあり方を規定して、法華経の講義して法隆寺を立てて……。

それ以来どれだけ多くの先人が、日本人たろうとしてきたか、単なる人間じゃなくて。

単なる島の良い人じゃなくて。

そういう無理をしてくれたからこそ、「日本」があるんですよ。

昼寝してうまいもの食って、みんなでゴロゴロのんびり過ごしてたら島の土人になってしまう。

先進文明に占領されても、まあそれでいいんじゃないの? って言ってるうちに奴隷にされて、国語も消えて、DNAも消えて、文化もへったくれもない。ただの島の住民が残るだけ。

世界中そんな地域だらけです。

その中で、ごくごくごくごくわずかな例外の一つが日本列島の我々なんです。

それを我々の代で終らせていいんですか?

幾ら核兵器を持とうと金儲けに頑張ろうと、源氏物語も世阿弥も本居宣長もどうでもいいとなれば、ただ金持ちの土人です。

それでいいのか。

そんな日本でいいのか。

私はそんな日本を残すくらいなら死んだ方がましです。

皆、そう思って歯を食いしばって来た。

どうでもいいや、生きていりゃというのなら、大東亜戦争で神風特攻隊員になって敵機にぶつかりにゆきますか?

生きてりゃいいなんてのは日本人じゃないんです。

その時の手がかりは国語なんですよ。

神風特攻隊員の遺書の国語の立派な事。

立派な遺書を書けるから立派な死に方ができるんです。

立派な死に方などどうでもいい、立派な国語などどうでもいいならば、そんな日本など八十年前に滅びればよかった。

私はそんな国なら生れてきたくはなかった。

それが私が今生きて、こうして皆さんの前で話している意義です。

こういう事を叫ぶ人が消えたら日本じゃないんです。

私に真の同志が増えない限り、私の死と共に日本は消えますよ。

その拠点が平和研であり、雑誌湊合です。

この『湊合』に私の今の全てがある。

これを読みこなすのは難しいと思いますが、ここを軸に日本を愛し、保つ運動を広げていただきたい。

読み合わせをする会を開いていただくのでもいい。

とにかくここに鍵がある。

だが、誰もまだそれに気づいていない。

私は誰にも気づかれないまま死ぬのだろうか。

私が死ぬことはもうなんとも思っていない。

問題は、それで日本は存続し得るのかなのです。




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