Foomii(フーミー)

白坂和哉 DAY WATCH ~突き刺さる政治情報~

白坂和哉(ジャーナリスト・政治系YouTuber)

白坂和哉

埼玉県八潮市・道路陥没事故 救出策の代替案! Entry:000123
無料記事

※当メールマガジンは画像が掲載されておりますのでウェブで読んでいただくよう、お願いします。過去記事も同様です(閲覧に際しては〔ウェブで読む〕ボタンをクリックしてください)


Introduction:2025年1月28日、埼玉県八潮市の県道54号(松戸草加線)一丁目交差点で、突然道路が陥没しトラックが転落。

この道路陥没事故はその後も大きな進展がないまま半月以上が経過した。

転落事故当初、呼びかけに対するトラック運転手の応答が微かに聞こえたとされるが、今もって安否が全く不明のままだ。

事故直後は数メートル四方だった穴が、今では救出工事のための重機が投入されたことで巨大なクレーターのように変貌を遂げている。

見通しは厳しい──トラック運転手の捜索開始は3カ月後、事故現場付近の完全復旧には2~3年も掛かってしまう想定だ。

現場の復旧はさておいたとしてお、運転手の捜索開始が3カ月後というのはあまりに遅すぎると言わざるを得ない。

──本当にそれほど時間が掛かってしまうのか?

そんな中、この厳しい現実に異議を唱える人物が現れた。

長きにわたり、トンネル工事に従事してきた西田稔氏である。


穴から30m付近に運転手が取り残されている


陥没事故があった現場では、地下約10メートルの地点に道路に沿って下水管が施設されている──その直径、実に「4.75m」

下水管を流れる汚水から発生する硫化水素が空気に触れ、化学変化で硫酸になったことで下水管が徐々に腐食したのが原因と見られている。

つまり、5m近い下水管に穴があき、そこに土砂が流入、当然ことながら道路下に空洞ができてしまったことで道路が陥没してしまったのだ。


ドライブレコーダーによって撮影された事故当時の映像を見ると、信号が青に切り替わったタイミングを見計らうようにして道路が陥没したことが分かる。

よって、運悪く左折したトラックは急停止することもできず、陥没した穴に転落してしまった。

おそらくは、転落した衝撃によってトラックのキャビン(運転席部分)が破壊され分離したと考えられる。

陥没事故翌日の1月29日、複数台のクレーンによってトラックを引き上げたところ、そこにキャビンはなかった。

キャビンは地中に取り残された、あるいは下水管の中に落ち込み流されたと考えられた。


このトラック引き上げにより、周囲の道路が新たに陥没している。

つまり、周辺道路は極めて脆弱であることが判明し、更なる二次被害を予感させるに十分な状況だった。

このこともトラック運転手救出作業を遅らせる原因となったであろう。


その後、ドローンによる下水管内部の撮影や、地表から細い穴を空けての小型カメラの映像により、問題のキャビンは陥没地点から約30m下流に流され、キャビン内に運転手が取り残されていることが分かった。

これが現在の状況であり、そこから状況が進展していない──


画像出典:2025年2月12日 テレ朝news 『安否不明の運転手か…穴から30m付近に人がいる可能性 八潮・陥没事故から2週間』

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900018360.html


アナログ的手法が実は最も有効だったりするかもしれない


このような状況で、トラック運転手を救出する手立てはあるのか?

現在のプランは仮の下水管を作り、汚水を迂回させることで運転席へのアクセスを図る方法だ。

埼玉県の大野知事によれば、この方法が最短の救出方法となるが、準備に約3カ月を要するというのだ。

画像出典:2025年2月12日 テレ朝news 『安否不明の運転手か…穴から30m付近に人がいる可能性 八潮・陥没事故から2週間』

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900018360.html


確かに、迂回の下水道を作ってしまえば3カ月も掛かるだろうが、本当にこれが最短の方法なのかについては大いに疑問が残る。

そして、これに異を唱えるのが、冒頭に紹介した西田稔氏なのである。


西田氏は昭和19年生まれの、現在80歳。

福島県福島市にて土木建設業の会社を営み(現在は米沢市在住)、長年にわたりトンネル工事専門でやってきた、言わばトンネルのスペシャリスト──現場たたき上げの "トンネル屋" だ。

また、西田氏は重機を使わない人力による井戸掘りの技術も持っており(これは特許も取得)、昨年の能登半島地震に際しては実際に被災現場に赴き、古井戸の再生も合せると20箇所以上もの地点で井戸水を提供してきた。


さて、そんな西田氏が提案しているのが台車によるトラック運転手救出である。

この台車の最大のポイントは、下水管の「円形菅」という特性を利用していること。

それゆえ、正面からの断面図では車輪が「ハの字」に付けられていることだ。

つまり、台車の車輪を下水管の直径から若干下に接地させることで、理論的にも物理的にも台車が沈むことなく、下水管内部で一定の高さレベルに固定されて走行することを可能にする。

この台車を下水管内で走らせキャビンに接近、運転手を収容するという考えだ。

※写真「上」は西田氏のFacebook、写真「下」は筆者によるスケッチ。

 https://www.facebook.com/minoru.nishida.5648


構造自体は極めてシンプルだ。

ただし、下水管への搬入経路であるマンホールは、大人一人が入れる程度といったように狭い事情がある。

よって、地上で最小単位の組み立てを行い、後は下水管内部、マンホール下の作業員待機用のステージ上での組み立てを想定している。

つまり「180㎝×30㎝」規格等の板を複数組み合わせて台車の本体を作り、強度を維持するための施工も施す。

台車が上手く組み立てられれば、2名程度の作業員が壁を手で伝うことにより移動が可能となる。

マンホールは約200mごとに設けられているため、陥没現場から下流に向かった最短ルートから救出活動を始める。

一見するとアナログ的、かつ原始的にも見えるが、実は台車を活用するこの方法、今回のような大口径の下水管での実績はないものの、中小規模の水道管の工事においては資材の運搬などで実際に使われていた方法だという。

下水管、水道管においても最近は機械化が進んでおり、こういったアナログチックな方法はすっかり影を潜め忘れられており、現場の技術者も発想することもなくなった。

しかし、西田氏は人的でアナログな工法がまだまだ現役の頃からトンネル工事一筋で現場で工事をしており、肌感覚で最適な方法を発想しているようだ。


西田氏が提案する台車を用いた方法は、上手くワークすれば約1週間ほどでトラック運転手を収容できる可能性があるという。

こういう事は書きたくないが、運転手の生存が絶望的な中、下水道の迂回工事が完了した3カ月後からの救出・収容開始だと、下水管内部で腐敗が加速度的に進行してしまった遺体の収容となってしまう。

その場合、遺体は原形を留めていない可能性が極めて高い。


であれば、下水道を迂回する方法と同時に、今回紹介した方法も試してみる価値は十分にある。

なぜなら、迂回工事の妨げにはならないからだ。

そして、更なる大きな利点は、汚水の制限をする事なく台車は汚水面より高い位置を前後に走行するため、汚水に影響されることはないことである。


立ちはだかる政治と行政の壁


実は西田稔氏は2月12日、永田町の議員会館を訪れ、前埼玉県知事で現在は参議院議員の上田清司氏と面会し、今回の台車を用いる救出を直訴している。

西田氏の説明に強い関心を持った上田議員はその場で関係者に電話連絡、しかし、既に3年計画で復旧計画が動き出してしまった中、これを覆すのは困難との感触であった。


ただ、今回の提案は今後全国展開するであろう上下水道管の「点検業務」に格安、組み立て・解体の容易さといった観点から、国土交通省に持ち掛けてみたいとの言葉は貰うことができた。

下水道の老朽化による大なり小なりの陥没は、2022年度で既に2600件以上もの事例が報告されており、点検体制の確立は急務となっている。


ちなみに、「点検」という観点で言えば、陥没現場付近の2021年4月の「googleマップ」に、不審な「ひび割れが」を確認することができる。

※この画像も西田氏のFacebookで見ることができる。

https://www.facebook.com/minoru.nishida.5648

この「ひび割れ」が道路陥没の兆候であると一概には言えないものの、今後の道路陥没を防ぐための一つの指針になるかもしれない。

──いずれにしても、一刻も早い運転手救出・収容を願ってやまない。


【読者の皆様へ】今回のメールマガジンは多くの方に周知してもらい、意見等をいただくためにも「無料」で公開すること、何卒ご了承願います。




本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛てにお送りください。


配信記事は、マイページから閲覧、再送することができます。

マイページ:https://foomii.com/mypage/


【ディスクレーマー】

ウェブマガジンは法律上の著作物であり、著作権法によって保護されています。

本著作物を無断で使用すること(複写、複製、転載、再販売など)は法律上禁じられています。


■ サービスの利用方法や購読料の請求に関するお問い合わせはこちら

https://letter.foomii.com/forms/contact/

■ よくあるご質問(ヘルプ)

https://foomii.com/information/help

■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/



今月発行済みのマガジン

ここ半年のバックナンバー

2025年のバックナンバー

2024年のバックナンバー

2023年のバックナンバー

2022年のバックナンバー

月途中からのご利用について

月途中からサービス利用を開始された場合も、その月に配信されたウェブマガジンのすべての記事を読むことができます。2025年6月19日に利用を開始した場合、2025年6月1日~19日に配信されたウェブマガジンが届きます。

利用開始月(今月/来月)について

利用開始月を選択することができます。「今月」を選択した場合、月の途中でもすぐに利用を開始することができます。「来月」を選択した場合、2025年7月1日から利用を開始することができます。

お支払方法

クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、d払い、auかんたん決済、ソフトバンクまとめて支払いをご利用いただけます。

クレジットカードでの購読の場合、次のカードブランドが利用できます。

VISA Master JCB AMEX

キャリア決済での購読の場合、次のサービスが利用できます。

docomo au softbank

銀行振込での購読の場合、振込先(弊社口座)は以下の銀行になります。

ゆうちょ銀行 楽天銀行

解約について

クレジットカード決済によるご利用の場合、解約申請をされるまで、継続してサービスをご利用いただくことができます。ご利用は月単位となり、解約申請をした月の末日にて解約となります。解約申請は、マイページからお申し込みください。

銀行振込、コンビニ決済等の前払いによるご利用の場合、お申し込みいただいた利用期間の最終日をもって解約となります。利用期間を延長することにより、継続してサービスを利用することができます。

購読する