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Introduction:「君たちはまだ長いトンネルの中」「縁の下のイミグレ」
──個性的な社会派作品を世に送り出してきた「なるせゆうせい」監督の最新作、それが「威風堂々 ~奨学金って言い方やめてもらっていいですか?~」である。
そんな「なるせ監督」が9月22日、本作に出演した俳優・近江谷太郎(おうみや たろう)氏と共に、舞台挨拶で宮城県仙台市のフォーラム仙台を訪れた。
仙台で「なるせ監督」を取材するのはこれで3度目──筆者は映画がリリースされるたびに監督と交流してきたのだ。
現場では『お互いやってやりましょ!』とエールを交わした。
実に、大切な同志と再会した気分である。
現役大学生が観た「威風堂々」〔文:白坂リサ(慶応義塾大学SFC)〕
本作は、奨学金をテーマとしながら、令和の若者に内面化された自己責任意識に深く切り込んだ作品である。
「苦学する学生を助けたい」
「パパ活」の「顔合わせ」で食事をする主人公の大学生・唯野空に、「パパ」の男性・島崎はそんなことを語った。
空は奨学金を借りていて、その返済のためにお金をいまのうちに貯めておかねばならず、さらに生活費にも苦しんでいた。
しかし、パパの発言は結果的に「パパ活」によって「お金を払う」という形で学生が苦しむ元凶となっている体制に加担、「(お金に困っても)やろうと思えば何でもできる」という自己責任意識と経済構造を回している。
結局、彼女はますます苦しむことになる──
そんな中で出会ったのが「ハードな考え」の持ち主、九頭竜レイだ。
レイの過激で吹っ切れた経済観念に空は驚愕し、言葉を失う。
「私はこんな風にはなれない」──空は一人つぶやくしかなかった。