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白坂和哉 DAY WATCH ~突き刺さる政治情報~

白坂和哉(ジャーナリスト・政治系YouTuber)

白坂和哉

宮台真司 襲撃事件 犯人像とその動機とは? <後編> Entry:000003
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この書籍の第五章「日本をどうするのか ──日本論」で、宮台氏は2008年6月に起こった「秋葉原殺傷事件」〔犯人の加藤智大(かとう ともひろ)は2015年に死刑判決が確定。2022年に死刑が執行された〕を取り上げ、この事件を格差批判やグローバル化批判の文脈で語るのは間違い、噴飯物だとさえ言っています。 宮台氏に言わせれば、格差社会が悪いのではなく ”格差社会で行き詰る社会的包摂性のなさが悪い” というわけです。 そんな現代社会の背景とは、次のようなものです。 ●現代は、会社の新卒採用の勝利者が人材価値を保障してはおらず、獲得した専門性が人材価値をもたらしている。 ●しかし、親や教育界の価値観は『いい学校 ⇒ いい会社 ⇒ いい人生』で未だに凝り固まっている。 「秋葉原殺傷事件」の犯人、加藤智大は県下でも屈指の進学校に入学するも、成績はほとんどビリような状態が続き、その後の大学進学上の「敗北」を過大に受け止め「挫折」しています(実際に彼は大学進学を断念しています) 加藤は自分の顔が良くないから女にモテないとネットの掲示板に書き込んでいますが、容姿については極めて普通。 むしろ問題なのは友達がいないこと、成績ばかり気にしている大人のダメさ加減だと宮台氏は指摘します。 そして、このような『いい学校 ⇒ いい会社 ⇒ いい人生』『顔が良くないから女にモテない』といった加藤の勘違いは、彼が「社会に包摂されていなかった」事実を如実に示しています。 ◆◆宮台真司 襲撃犯と山上徹也の類似点◆◆ あらためて「宮台真司 襲撃事件」の犯人像を考えてみます。 犯人とは、何らかの「敗北」により最終的は人生に「挫折」し、社会から包摂されていなかった人物ではないでしょうか? それは、ネットやリアル社会で宮台氏から罵倒された怨恨により犯行に及んだ「単純怨恨犯」ではなく、旧統一教会のような宗教を信仰するものが何らかの警告を込めて犯行に及んだ「カルト宗教犯」でもないと予測します。 これには、安倍晋三氏を銃撃し、死に至らしめた山上徹也・容疑者との共通項を見出すことは可能ではないでしょうか。 奈良県出身の山上容疑者は、県で1,2位の進学校に入学しましたが、大学には行っておりません。 言うまでもなく、母親が旧統一教会に散財していたからです。 山上容疑者が中学の頃に母親が旧統一教会に入信し、その後、彼の生活は激変しています。 やがてそんな母も破産し、自分は任期制の自衛官になったり、自衛隊退官後は日雇いや非正規の仕事を転々とします。 山上容疑者は逮捕された時点で41歳でしたが、彼は中学生の頃から30年以上、ずっと負けっぱなしの人生だったわけです。 母親が旧統一教会にどんどん金をつぎ込み、その日の生活もままならず貧困に苦しみ、進学校に入学したのに大学に行くこともできず、自衛隊もお役御免となり、学生としても社会人としても負けっぱなしの人生だったわけです。 おそらく彼女もいなかったでしょうし、女性との交際履歴もないのかもしれません。 そして40歳を過ぎた頃に彼は大事件を起こした。──それが安倍晋三氏銃撃事件です。 彼は人生に「敗北」し、40歳を過ぎて「挫折」を痛感したでしょう。 なぜなら、日本という社会は一旦社会から落伍すると二度と這い上がれない社会だからです。 考えても欲しいのですが、山上容疑者のように職を転々としてきた40歳過ぎの男性に、この先明るい未来があるでしょうか? そんな30年以上に及ぶ旧統一教会への鬱屈した怒りが爆発したのが、安倍晋三氏銃撃事件。 旧統一教会のトップは狙えないと諦め、そのアイコンとなる安倍氏に狙いを定めたわけです。 そんな山上徹也も、まるで社会に包摂されていない存在でした。 ◆◆『日本の難点』が13年を経て顕在化した!◆◆ 今回、宮台真司氏を切りつけた犯人についても、山上容疑者と類似点を見出すことが可能ではないでしょうか。 犯人は何らかの「敗北」により最終的は人生に「挫折」し、社会から包摂されていなかった人物。 年齢は40代前半の男性。決して学歴は高くなく(大学には行っていない可能性があり)、しかし社会、政治に関する本を数多く読んでおり、世の中に対する意識も極めて高い。 そして、時として過激な思想を空想してしまう。 故に現在の日本社会に深く絶望しており、もちろん、宮台真司氏の大ファンでもある。 仕事については我々が想像する一般的な会社員ではなく、非正規雇用者で不安定な職業に就いている自分にコンプレックスを抱いている。 そして、政治的にはリベラルよりも保守に傾いています。 そんな男が宮台氏を切りつけるまでに至った背景には、宮台氏に対する大きな「絶望」があったためと予想します。 それはどのような「絶望」であるかは定かではありません。 先ほど紹介したように、安倍晋三氏の「国葬」をめぐる ”無礼な” 発言かもしれないし、他にこれに類似した政治的な発言かもしれません。 言えることは、犯人の男性にとって不愉快な宮台氏の言動が少しづつ蓄積され、それが臨界点を超えた時点で今回の犯行に及んだであろうこと。 つまり、ファンである宮台氏の不愉快な言葉の積み重ねが犯人に絶望を抱かせ、犯人のつまらない人生に対しあらためて「挫折」を意識させる結果となった。 それで犯人は宮台氏に ”裏切られた!” と感じ、犯行に及んだのではないか?──そのように推測しています。 『今まで宮台真司を信じ、ここまで生きてきたが、何だか宮台は俺が思ったような男ではなかった!俺は裏切られた!』といった感覚です。 この予想は完全に外れるかもしれませんが、それでも犯人は社会に包摂されない人間であるに違いありません。 そして、そんな人間がが存在し凶悪犯行に及んだということは、そこに社会の分断があるということです。 ちなみに宮台氏は、昨年2021年12月31日にAbemaTVの対談番組(「劣化した議論はひろゆきのせい」成田悠輔&宮台真司と考える日本社会の闇深さ)に出演した際、『分断が良いか悪いかという議論はくだらない。国民国家はどのみち分断されていくのは当たり前だから』と言い切っています。 https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p3427?utm_medium=social&utm_source=youtube&utm_campaign=official_yt_abemaprime_202201041416_ap_free_episode_89-66_s99_p3427 この事件については一日も早く犯人が捕まり、動機が解明されることを強く願うのは言うまでもありません。 しかし、宮台真司という社会学者が、自身に振りかかった「分断」に関する事件について(これこそ『日本の難点』そのものですが──)、学術的にどのように説明し総括してゆくのか? まさに『日本の難点』が、発売から13年を経て顕在化したと言えるでしょう。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛に返信をお願いいたします。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 配信記事は、マイページから閲覧、再送することができます。ご活用ください。 マイページ:https://foomii.com/mypage/ //////////////////////////////////////////////////////////////// 【ディスクレーマー】 本内容は法律上の著作物であり、各国の著作権法その他の法律によって保護されています。 本著作物を無断で使用すること(複写、複製、転載、再販売など)は法律上禁じられており、刑事上・民事上の責任を負うことになります。 本著作物の内容は、著作者自身によって、書籍、論文等に再利用される可能性があります。 本コンテンツの転載を発見した場合には、下記通報窓口までご連絡をお願いします。 お問い合わせ先:support@foomii.co.jp //////////////////////////////////////////////////////////////// ■ ウェブマガジンの購読や課金に関するお問い合わせはこちら   support@foomii.co.jp ■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/ ////////////////////////////////////////////////////////////////

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