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やっぱり地理が好き
~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~
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第194号(2024年2月27日発行)、今回のラインアップです。
①世界各国の地理情報
~石炭灰とレアアース~
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こんにちは。
地理講師&コラムニストの宮路秀作です。
日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。
今回で194回目のメルマガ配信となります。
2010年9月7日、あの日、何が起こったか覚えていらっしゃいますでしょうか?
尖閣諸島中国漁船衝突事件が発生した日です。
沖縄県・尖閣諸島沖の日本領海内で操業中の中国漁船が、巡視活動中の海上保安庁巡視船2隻に衝突する事件のことです。
日本側は中国人船長を公務執行妨害の現行犯で逮捕しますが、中国政府は激しく反発。尖閣諸島周辺で起きたこの衝突は、一漁船事故の域を超えて日中間の重大な外交摩擦に発展しました。事件後、中国政府は日本に対して即座に対抗措置を講じ、日中間の航空路線拡充交渉の中断や中国人観光団の日本渡航制限など経済・外交面で圧力をかけたます。パラオに対してもそうですが、「俺たちを怒らせたから、観光客を送らないぞ! おめぇらの観光業がどうなっても良いのか?」と脅しをかけるのは中国の常套手段です。
こういうのを「馬鹿の一つ覚え」といいます。
そして極めつきには、先端技術産業を支えるレアアース(希土類)の対日輸出を事実上停止する措置に踏み切りました。当時、日本のレアアース調達のおよそ9割を中国に依存しており、レアアースから作られる高性能磁石などの供給が途絶えればハイブリッド車などの製造が立ち行かなくなるため、この禁輸措置は日本の産業界に大きな衝撃と混乱をもたらしました。実際、事件後の一年間でレアアース価格は、一時的にではありますが10倍にまで高騰しました。
この尖閣漁船衝突事件は、戦略物資が外交カード(武器)になり得ることを印象づけた象徴的な事例となりました。
同時に、この出来事を契機にレアアースを巡る国際的なパワーバランスにも変化が生じます。各国は資源供給の中国一極依存に危機感を強め、供給地の分散化など「脱中国」の動きを加速させました。日本も例外ではなく、レアアースの中国依存低減に向け動き出しました。実際、他国との間でレアアースの長期供給契約や共同開発を進めるとともに、リサイクル技術の推進やハイテク製品でのレアアース使用量削減にも着手したていきました。
その結果、日本の対中レアアース依存度は事件当時の9割から、近年では6割程度にまで低下し、経済安全保障の観点から一定の成果を上げているといえます。とはいえ、現在に至っても世界のレアアース供給に占める中国の比率は依然として非常に高くなっていて、この構図は容易には崩れていません。
だからこそ中国は電気自動車(EV)を安価に製造することができるわけで、「トヨタ潰し」を目的に「これからは内燃機関ではない! 地球温暖化防止を念頭にEVの普及を進めるべきだ!」と嘯いて、ヨーロッパ各国がEV推進を図るも、価格競争で中国車に負けるというポンコツ具合を露呈しているわけです。自分にとって都合が悪くなるとするルール変更をするのがヨーロッパという古びた、それでいてプライドだけは一丁前の国々です。しかし、変更したルールで自分たちが勝者になれないことの方が多く、こういうのをダサいといいいます。
各国は「脱中国」を見据え、海底資源の開発からリサイクルの拡充まで様々な方策で代替調達を模索しています。その中で近年注目を集めているのが、石炭火力発電所から出る副産物である石炭灰からレアアースを回収するという一風変わったアプローチです。
まさに「廃棄物を宝に変える」発想といえます。
それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。
よろしくお願いします!
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①世界各国の地理情報
~石炭灰とレアアース~
「石炭灰」ってご存じでしょうか?
これ、「せきたんばい」と読みます。
石炭灰は、石炭火力発電のさいに生じる大量のもので、これまで有毒で扱いに困るものとして扱われてきました。実際、石炭灰は発電所敷地の池や埋立地に積み上げられ、雨水とともに水路へ流出したり土壌を汚染したりするリスクがあります。
ところが近年、この「灰の山」が実は希少資源の宝庫ではないかという指摘が顕在化してきました。アメリカ合衆国・テキサス大学とワイオミング大学の共同研究によると、過去数十年分の石炭灰に最大1,100万トンもの希土類元素(レアアース)が含まれているのではないかと推定されています。これは現在確認されている全米におけるレアアース埋蔵量のおよそ8倍に相当し、その経済価値はおよそ84億ドル(1兆3千億円相当)にも上るとされています。
すさまじい額です……。
そこで、一度は「悪役」とされた石炭灰ですが、未来のクリーンエネルギーを支える貴重な資源へと立場が逆転しつつあるようなのです。
■レアアースの抽出、精製
レアアースとは、ランタンやネオジムなど17種類の希少元素の総称で、太陽光パネル、風力タービンの磁石、電気自動車(EV)、バッテリー、家電製品まで広範な先端技術に欠かせません。
こうした元素は地殻中に広く存在するものの、濃度が低く分散しているため分離・抽出が難しく、通常は専用の鉱山から大量の鉱石を採掘・処理して取り出しています。石炭灰中のレアアース濃度も平均すると数百ppm程度と決して高くありませんが、莫大な量の灰そのものが存在するため、十分な回収ポテンシャルがあるとされていて、研究者たちは「原料中の濃度は低くとも、量が膨大なため有望な資源となり得る」と指摘しています。
石炭灰からレアアースを抽出する技術は開発途上にあり、従来のレアアース抽出法は高温や強酸・強アルカリを用いるものが一般的で、労働者や環境への負荷が大きく、コストが高価になりがちでした。
例えば実験では、石炭灰に酸を混ぜて極微量のレアアースを溶出させる手法が試されています。しかし近年、より持続可能で効率的なプロセスが模索されています。米国エネルギー省(DOE)の研究チームは、弱い無機酸を用いて常温環境で3段階抽出を行う新手法を開発しました。この方法では前処理不要で石炭灰から80~100%ものレアアースを溶出でき、酸の使用量も削減できるため環境負荷とコストを大きく低減できます。
また別のアプローチとして、イオン液体(常温で液体の塩)を溶媒に使う革新的な抽出技術も登場しています。米国のスタートアップが開発中の方法では、特殊なイオン液体と水を加熱すると単一の液相となりレアアースを選択的に灰から溶かし出し、冷却すると相分離する性質を利用します。
この工程によりレアアースを含む液体相を容易に回収でき、大量の強酸や有害な化学薬品を用いる従来法に比べ副生成物が少なく安全だと報告されています。
抽出されたレアアースは、混合物の形で得られるので、さらに精製・分離して個別の元素や合金として取り出す必要があります。レアアース各種は性質が似通っていて分離精製が難しく、一般には溶媒抽出法やイオン交換法による多数段階の処理が行われます。中国が精製分離分野で先行してきた背景には、この工程の複雑さがあるといわれます。しかしアメリカ合衆国もこの下流工程の開発に力を入れており、国防総省は国内で抽出したレアアースを金属化し磁石材料に加工する一貫生産体制の構築を目指しています。
つまり、石炭灰からレアアースを取り出す技術とあわせて、その先の精製・磁石製造まで含めた包括的な技術開発が進められているわけです。
■環境への影響は? メリットとデメリット
石炭灰からレアアースを回収・再利用することは、環境面で二重のメリットをもたらすと期待されています。
第一に、
