… … …(記事全文2,995文字)●北朝鮮体育相に接触も無視される
9月21日、各メディアが次のとおり報じた。
愛知・名古屋アジア大会参加のため来日した、北朝鮮の金日国(キム・イルグク)体育相に19日、日本政府関係者が接触していたことが20日分かった。大会の開会式が開かれた名古屋市の会場で、対話の意思を直接伝える狙いがあったとみられる。事前の調整はなかった模様で、北朝鮮側は当惑した様子も見せ、金氏は返答せず立ち去ったという。複数の日朝関係者が明らかにした。
●「あらゆる選択肢」を排除しない
高市早苗内閣は、金正恩朝鮮労働党総書記との会談を含む「あらゆる選択肢」を排除しないと表明している。「あらゆる選択肢」とか「あらゆる手段」という言葉は、聞き飽きたが、それを志向することは否定しない。だが、今回の報道が事実だとすれば、疑問符が付き、あまりにも筋が悪い。
●相手が体育相には疑問符
まず、接触するのがなぜ体育相なのか。それも事前の調整なしである。仮に話ができたとしても、体育相が金総書記まで日本の意向を伝える地位にあるか、と言えばそうではないだろう。40回以上訪朝したという故アントニオ猪木氏の北朝鮮側の窓口は、朝鮮対外文化連絡協会(対文協)という民間団体だった。この対文協でさえ朝鮮労働党の関与がある可能性がある、という程度だ。猪木氏から、盛んに訪朝を勧められた私だが、この辺りにも逡巡させる要因があった。とりわけ北朝鮮のような独占国家に対しては、話がトップに伝わらなければ、何の意味もない。
●クレディブルチェックが必要
日朝首脳会談のお膳立てをした田中均氏は、もちろん相手との協議は秘密裏に行う必要がある。そして、本当にその相手(ミスターX)がトップと繋がっているのかが最も重要であると語っている。そういった意味で、果たして信用できる(トップまで話が届く)相手なのか。ミスターXのクレディブルチェックを行ったという。拉致問題には直接関係しない日朝の政策をミスターXに伝えた。すると1週間程度で北朝鮮メディアが、1番にその内容を報道した。明らかに、話が金総書記まで伝わっている証である。また、田中氏によれば、北朝鮮外務省高官など組織の中の人間の方が却ってやりにくい(内部で情報が共有される危険性があるから)とのことで、これは意外だった。
●やみくもに伝えても駄目
本来であれば、経済制裁により北朝鮮から日本への渡航は禁止されている。しかし、スポーツに関しては例外で北朝鮮選手団やコーチ、役員は来日が許容される。報道によれば、接触した日本の政府関係者は北朝鮮問題の担当で、会場内を移動中の金日国氏らに声をかけ、訪日歓迎と、日朝の交流促進への意思を伝えた。だが、政府関係者の所属などが北朝鮮側に明確に伝わらなかったため、金氏の随行者が割って入り、金氏はその場を離れたと言う。何ともお粗末な行動で呆れてしまう。もっと知恵を働かすことはできないのだろうか。
