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先日、ワック(月刊誌「WiLL」の発行元)が制作しているガリレオXという番組の「精子9+2のミステリー 私たちの精子に秘められた謎」(第66回科学技術映像祭受賞作品)をYouTubeで視聴した。
9+2というのは、ほとんどあらゆる動物の繊毛や鞭毛に見られる構造のことだ。
ちなみに繊毛は細くて短い毛で、びっちりと生えているのに対し、鞭毛は太くて長い毛で1本か2本生えているだけ。
動物の精子は鞭毛によって動いているのだが、その動きを担っているのが9+2構造だ。
鞭毛を輪切りにして顕微鏡で見ると、2つの輪がくっついたものが環状に9個存在し、中心にはくっついていない輪が2つ存在する。
これは輪切りにしたからそう見えるのであって、実際には鞭毛の中に、2つくっついた微小管が環状に9個あり、中心にはくっついていない微小管が2つあるのである。
もっとも微小管だけでは鞭毛を動かすことはできず、微小管を取り巻く何種類かのタンパク質がその役目を担っている。
タンパク質が微小管を動かし、それによって鞭毛自体が動くのだ。
実は、この番組で私が最も注目したのは鞭毛の9+2構造ではない。
番組の終わりのほうに登場した、マガキガイの精子に正型精子と異型精子があるという話である。
正型精子は小さくて遺伝情報を持っていて卵子を受精させるが、異型精子は非常に大きくて長い。
そして遺伝情報は持っていないのである。
とすれば異型精子は何のために存在するのか。
マガキガイの精子の研究をしている男子学生は番組の中で、他のオスの精子をブロックするとか、化学物質を放って弱らせるためではないかと述べた。
他のオスというには、メスはただ一個体のオスだけと交配するわけではないからだ。
精子に受精の役目を持つものと、そうでないものがある――初めて聴く方には天地がひっくり返るほどの驚きかもしれないが、これは生物学を学んでいる者にとっては当然の予想だ。

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