… … …(記事全文2,917文字)
ここのところ、まるちゃん(東洋水産)のカップうどん「赤いきつね」のCMが騒動となっている。
それはアニメなのだが、深夜自宅で恋愛ものらしきドラマを見終わった女の子が、まずティッシュで涙を拭き、ドラマの余韻に浸りつつ、目を潤ませ、頬を赤らめながら赤いきつねを食するというもの。
最後の決めの言葉は「出汁がうまいとほっとする」だ。
批判者たちによれば、目が涙で潤んでいるさまや、頬の赤らみ、麺をすする音、汁を飲む音、お揚げを噛む音、は~というため息、食べるにあたって髪を耳にかける動作などが性的である、不快だというのである。
というわけでさっそく当のCMをYouTube見てみたが、コメント欄は、これのどこが性的なのかという意見が圧倒的だ。
それは老若男女を問わないという印象だ。
その他は、うまそう、このCM最高、このCM大好き。
そして、「寒い日って寂しくなるけど、暖かい物食べたら心の芯から温まるような感じがして、安心しますよね。その事を思い出させてくれる良いCMだと思います」
「感動したり泣いたりして情緒的になった後に暖くて出汁が旨いもの食べたらほっとしてHotになる良いアニメーションだと思う」
この二つが、おそらくCM製作者の意図する、少なくとも表の面を余すところなく、完璧に理解した感想なのではないだろうか。
実を言うと私は、このCMを見て、まったく性的な要素を感じないわけではなかった。
むしろ、女の子の潤んだ瞳や紅潮した頬を無理なく導入するために、まず彼女に恋愛ドラマで泣かせるという仕掛けを施した。
そのうえでうどんをすすらせるとか、汁のしたたるお揚げを噛ませるとか、汁をごくんと飲ませるという、考えようによってはちょっとセクシーな行為をさせる。
そして出汁がおいしくてほっとしたからとも、何かよからぬことを想像したからともとれる、ため息をつかせる。
このように製作者は、表と裏の二面性を持たせた作品をつくったのではないかと思うのだ。
「赤いきつね」とペアをなすブランド、「緑のたぬき」のCMも同じ製作者によるアニメとなっていて、学校の男子教師の放課後編だ。
同僚たちが「お疲れ様」と言って出て行き、一人残された職員室で、若い男性教師がパソコンのキーボードをカタカタ言わせて仕事する。
一区切りついたところでできあがったカップそば、緑のたぬきを一口、二口ほおばってはキーボード作業をし、また一口、二口ほおばっては作業。
最後に汁を飲み干し、カップを脇に置いて「出汁がうまいとほっとする」との決め台詞だ。
このCMはまったく炎上していない。
性的な要素がないととらえられているからだろうか、カップそばを食べるのが男性だからなのだろうか、まったく文句をつけられていない。
確かに赤いきつねのように、瞳を潤ませてはいないし、頬も赤くない、すすり方が実に豪快で男っぽくて、わざとらしい間がない。
ため息もない。
購読するとすべてのコメントが読み放題!
購読申込はこちら
購読中の方は、こちらからログイン