… … …(記事全文2,034文字)前回、『ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ 争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う』(アシュリー・ウォード著、夏目大訳、ダイアモンド社)のブチハイエナのくだりを紹介し、考えてみた。
今回はこの本でブチハイエナの次に登場する、オオカミである。
オオカミはパックと呼ばれる、4頭~8頭(せいぜい10頭)くらいの群れで生活し、最も順位の高いオスとメスのペアしか繁殖することができない。
パックのその他のメンバーは繁殖ペアの子どもたちか、キョウダイである。
子どもたちは性的に成熟すると、パックを出て行く場合がある。
そうしないことには近親交配になってしまう可能性があるからだ。
このようにオス、メスを問わず、1人で行動するオオカミを一匹オオカミ
と呼ぶ。
一匹オオカミというと聞こえはいいが、集団で狩りをすることができないうえに、外的と集団で戦うこともできない、極めて脆弱な存在だ。
しかし異性の一匹オオカミどうしが出会えば、つがいとなり、繁殖をしてパックを形成する道が開けてくる。
最も順位の高いオスとメスとが繁殖すると言ったが、ときに下位の者が繁殖することがある。
とはいえそれは、養子として外からパックに加わったオスと元からいるメスという組み合わせ。
どうやってそのような仕組みが進化したかはわからないが、これなら近親交配は避けられる。
実はオカミのパックにおいて私が一番感情移入したくなるのは、最下位の個体である。
食べ物の乏しい時や最上位のオスの機嫌が悪いとき、その個体は仕留めた獲物を食べさせてもらえないというみじめな存在。
繁殖などは夢のまた夢である。
ところが著者は「興味深いのはオメガ(最下位の個体)がどうやら、パックをまとめるのに重要な役割を果たしているらしいということだ」という。
最下位の者にも重要な役割がある。
だからこそその個体がパック内に存在することの意義があるというものなのだ。
で、その重要な役割とは?
動物にタブーはない! 動物行動学から語る男と女
竹内久美子(動物行動学研究家 エッセイスト)