■□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年6月15日発行 第224号 □■ ──────────────────────────────── ■ 「平和ボケ」はどっちだ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「平和ボケ」という言葉は、いわゆるタカ派がハト派を罵る言葉だと相場が 決まっている。 しかしその言葉はそっくりそのままタカ派に跳ね返っていく。それが北朝鮮に 対する安保理制裁決議の論議の中で見事に証明された。 すったもんだの末に国連安保理の制裁決議が成立した。その柱は金融制裁 強化と船舶の臨検義務化だった。 しかし船舶の臨検義務化は、「公海上の臨検は武力衝突につながる」という 理由で中国が反対し(6月7日東京新聞)、米国がそれに譲歩して、またしても 強制力が弱められて終わった。 強硬論一辺倒の日本政府は、今回の安保理制裁決議では生ぬるいとばかり、 米国にならって個別制裁を強化するという。 米国がもっぱら金融制裁強化を行なおうとしているのに、日本は臨検強化を 行なおうとしている。 ところその実態はあきれたものだ。あげた拳の振り下ろしに苦慮している。 6月14日の読売新聞の記事によると、自衛隊の活動は不審船などの 情報収集に限定し、貨物検査はもっぱら海上保安庁に任せる特別措置法をつくる 方針だという。 これは何を意味するのか。口では強硬論を唱えてみても実際の臨検には及び腰 だということである。北朝鮮と交戦する事を恐れているということである。 北朝鮮の今回の恫喝が、いままでのようなこけおどしに終わるのか本物の戦争 に発展するの、私には勿論わからない。 北朝鮮のあまりの強硬姿勢の裏には、米国と示し合わせた上での危機捏造の 合作だという意見すらある。 あるいは北朝鮮が米国の出方を読み間違って、結果として不測の米国攻撃が 起きるかもしれない。 しかし、孫崎享氏の著書「日米同盟の正体」でも明らかにされているように、 国家間の戦争はつまるところ損得勘定で決まる。 そうであれば北朝鮮のほうからいきなりミサイル発射を行なって戦争を仕掛け てくる事はありえない。そうなれば米国の報復を受けて北朝鮮は壊滅させられる。 北朝鮮がミサイル攻撃をする時は、米国から攻撃され、国が壊滅される時に 最後の反撃として行なう時しかないのだ。米国が先制攻撃をしないかぎり戦争は 起こらない。 しかし小競り合いの戦争となると話は別だ。むしろ小競り合いが起き、犠牲者 が出る事によって一時停戦、話し合いが始まり、結果として全面戦争が回避 される、その可能性はありうる。 もし日本が単独で北朝鮮の船舶を臨検すれば、北朝鮮はほぼ間違いなく武力 で反撃してくるだろう。 その危険性を一番知っているのは自衛隊だ。だからこそ自衛隊は、政府は 我々に本気で臨検をさせるつもりだろうか、などという当惑しているという。 そんな中での読売新聞の記事である。 本来ならば海上保安庁の任務である海賊対策に自衛隊を派遣する。それは、 いくら海賊が武装しているからといって、海賊は軍艦を見れば逃げる事を知って いるからだ。海賊対策は、喧伝されているほど危険でない事を知っているからだ。 その一方で、戦争行為に等しい船舶の臨検は、本来ならば軍隊である自衛隊が 行なうべきであるにもかかわらず、海上保安庁にまかせる。 自衛隊による臨検ならば北朝鮮との戦争につながる。自衛隊に死傷者が出る。 警察保安庁の警察行為という事にすれば北朝鮮を刺激する程度が低い、警察活動 の中の犠牲者で済ませる事ができる、そういう計算があるに違いない。 これこそが「平和ボケ」ではないのか。 もっとも、私は「平和ボケ」大いに結構、という立場である。 戦後63年間、一度も実戦にかかわる事がなかった世界でも稀有な日本。その おかげで戦争というものを実感として考えられなくなり、戦争に巻き込まれる事 を極端に恐れ、嫌う。 その事は、歓迎されこそすれ、非難される事では決して無い。 かつて定年を迎えた自衛隊員がこう語ったという。自分は一度も武器を使用する ことなく任期を全うした。その事を誇りに思う、と。 素晴らしい言葉だ。これこそが「平和ボケ」した日本の誇りである。そう思わ なくてはならない。 ──────────────── 天木直人のメールマガジン 2009年6月15日発行 第224号 発行者:天木直人 著者ブログ: http://www.amakiblog.com/ 読者の皆様からのメールをお待ちしております。

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