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Introduction:ゴキブリ人民党──英語名は ”Cockroach Janta Party”、略してCJP。
──最初このニュースに接した時、正直、笑ってしまった。
何とも珍妙な名前だが、インドの新党だという。SNS上のジョークか、あるいは出来の悪いパロディアカウントの類いかと思った。
ところが数日後、別の記事でまた「ゴキブリ新党」の文字を見た。
気がつけば、各国の主要メディアまでが真顔でこの「政党」について報じている──CNN、アルジャジーラ、英ガーディアン。
冗談にしては扱いが大き過ぎる。
慌てて調べ直して、もう一度驚いた。
この「政党」は、実在の登録政党ではない。
つまり、インド選挙管理委員会に届出を出した政治団体ではない。出発点は、米国ボストンで広報を学ぶ一人のインド人学生が、ある朝の思いつきで立ち上げた「風刺運動」だった。
創設者の名はアビジート・ディプケ。
彼自身が後にインドのメディア『Newslaundry』のインタビューで語っている──「ジョークとして始めたんだ。それが今では、殺害予告まで届くようになった」
さらに驚いたのは、この「政党」のSNSアカウントがわずか数日でフォロワーを爆発的に増やし、一部報道では与党・インド人民党(BJP)の公式アカウントの数字を上回ったとされていることだ。具体的な数字には諸説あり、「2300万」という数字も飛び交っているが、ここでは数字の正確性よりも、実在しない ”政党” が、リアル与党を脅かす規模で支持を集めた──という事実そのものに注目したい。
そして、もう一つ。
創設者ディプケ氏は、この運動の立ち上げに際して、ある古典文学を下敷きにしている。
「ある朝、グレゴール・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、ベッドのなかの自分が一匹の巨大な虫に変わってしまっているのに気がついた」
フランツ・カフカ『変身』──1915年。
100年以上前のチェコ系ユダヤ人作家が描いた、ある朝突然「虫」になってしまった青年の物語。それが2026年のインドで、政治運動になった。
この時点で「珍妙な名前のジョーク」というカテゴリーが崩壊する。
これは、何か別のものに違いない・・・

