… … …(記事全文3,077文字)「音楽ライターが、書けなかった話」(神舘和典著・880円・新潮社)
ライターは見た!アーティストたちの愉快な素顔、奇妙な性癖――。
ハービー・ハンコックの遅刻に肝を冷やし、ロン・カーターの厳格さに怯える。エリック・クラプトンの客層に驚き、坂本龍一の裏技に感服する。
たった一言で大物歌手が急にご機嫌になることもあれば、大物プレイヤーがめげてしまうこともある・・・らしいですよ。
音楽ライターの取材現場にはライブのような緊張感、感動があふれているそうです。
マイルス・デイヴィス、ホール&オーツ、マイク・スターン、ジョン・スコフィールド、ユーミン、マーカス・ミラー、マイケル・ブレッカー、シカゴ、ダイアン・リーヴス、上原ひろみ、秋吉敏子、矢野顕子、U2、ローリング・ストーンズ、シーナ・イーストン、ウェイン・ショーター、デヴィッド・サンボーン、スティング、ブランフォード・マルサリス、エルヴィス・コステロ、ダイアナ・クラール、ジョージ・ベンソン等々、大物続々登場のエピソード集です。
音楽ライターに憧れる人にも、ただの音楽好きにもお勧めの1冊。
初対面の人に自己紹介すると、「好きなことを職業にできていいですね」とか、ちょっと事情に通じている人には「サンプル盤はもらえますか?」と聞かれることがあるそうです。
仕事だから。すべてがいいかというと必ずしもそうではありません。ラーメン屋の店長は「毎日ラーメンを食べられて幸せですね」とは言われませんもの。
音楽が好き。仕事のなかで心が震える瞬間がある。
「音楽ライターのはしくれとしてためこんだ、そんな話をまとめてみました」と著者。天才たちの奇妙な性癖、子どもっぽい振る舞い、社会人としてはいかがなものかと思うルーズさに触れたときには妙に愉快だったり。
さて、「CASA」というアルバムがあります。スペイン語ポルトガル語で「家」のことですね。「カサブランカ」といえば「白い家」です。
「♪イパネマの娘」で知られるボサノバ歌手アントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲を録音。場所はスタジオではなくリオデジャネイロに今もあるジョビンの家。しかもジョビンが弾いていたピアノ。
「ピアノを弾いているうちにあの世からジョビンの魂が降りてきた。自分の音とは異なるサウンドが生まれた」と坂本さん。
さすがにこういう表現はライターにとっては極めて扱いづらいものです。どう伝えるか、魂の世界を文章にするのは至難の業です。
もしかすると、「教授」と呼ばれた坂本龍一さんならば、オカルト的ではない説明をしてくれるかも・・・そもそも音楽は音ですから言葉で伝えること自体が無理だ、という考え方もあります。
正直に坂本さんに打ち明けてみると・・・実にわかりやすく説明してくれたのです。
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中島孝志(作家・コンサルタント etc)