… … …(記事全文2,475文字)「能力はどのように遺伝するのか 「生まれつき」と「努力」のあいだ」(安藤寿康著・1100円・講談社)
大谷翔平選手や藤井聡太八冠のような、同じ人間とは思えない卓越した能力は、どうしたら得られるのか。
生まれつき決まっているのか。それとも努力や環境しだいなのか。
人類がいまだに答えを出せずにいるこの問題は、「遺伝」につきまとうタブーや偏見が邪魔をして、長い間、正面から議論されませんでした。
「遺伝と能力」という問題は、パンドラの箱に深くしまわれたままだったのです。
双生児の比較から能力と遺伝の関係をあぶりだす行動遺伝学は、唯一、この問題の研究を続けてきました。そして近年、発達著しいゲノムサイエンスによって個人の遺伝的素質がすべて暴かれるようになり、研究は一気に加速。その数々の成果は、これまで誤解だらけだった「遺伝」そして「能力」の正体を、白日のもとに引きずり出しました。
ついにパンドラの箱が開けられたのだ!
日本の行動遺伝学をリードする著者が、「遺伝」にまとわりつく無知の闇を真実の光で照らし、「自分」がわからずに悩む人たちに本当の希望を与える書!・・・とのことです。
十人十色という言い方があります。地球上にホモサスピエンスが登場以来、古今東西この世には数え切れないほどの人々が生まれました。
この地球上にこれまでに生まれ、これからも生まれるはずの人々まで含めて、そのすべてを比較したとき、あなたと遺伝的に同じ条件で生まれる人は一卵性双生児のきょうだいを除いて誰一人としていません。
しかし、実際のところ、人は遺伝的に圧倒的にほとんど同じなのだそうです。遺伝情報を担う物質デオキシリボ核酸を作り上げている4つの遺伝子、アデニン、チミン、シトシン、グワニン の配列を一人ひとり比べてみると、99.9%まで同じになります。2001年に終結したヒトゲノムプロジェクトの結果として実証されています。
なぜ多くの人は大谷翔平選手や藤井聡太八冠のような卓越した能力を獲得できないのか・・・なぜある人は残虐な犯罪を犯してしまうのか。それはそこにDNAの塩基配列の「0.1%」の違いが絡んでいるからです。
人の能力や心の働きはDNAによって完全に決まっているわけではありません。しかし遺伝子の差は重要な個人差の要因になっています。
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中島孝志(作家・コンサルタント etc)