… … …(記事全文3,613文字)「医者が「言わない」こと 後編」(近藤誠著・1430円・毎日新聞出版)
日本の医療は中高年に厳しい、と近藤先生。
多くの医者たちが、健康な人々に病名を付けたがる。医療業界は治療対象となる患者をひとりでも増やし「生活習慣病」や「がん」を見つけ出すことに熱中していますから、このままでは健やかに生きていくことも死んでいくことも難しいのだとか。
たとえば、人間ドックでは「早期発見」されれば早く治療ができ迅速に治せるというけれども、それがホントなら医師が率先して人間ドックを受けるはず。
しかし、著者をはじめ多くの医師が人間ドックを拒否。人間ドックの実態と「病気」が発見されたその後の展開を熟知している故ではないか・・・だとすれば知らないのは、従順な患者予備軍ぱかりなり・・・
医者は人間ドックを受けたがらない。いや、そもそも受けない。
「患者よ、がんと闘うな」の近藤先生。「患者よ」は医学界はもちろん、なんといっても当事者である患者さん、そしてそのご家族、関係者に大きな衝撃を与えました。
私が主宰する「キーマンネットワーク」という勉強会でも一度、近藤先生にご登場頂いたことがあります。
「家族にガン患者がいるんですが、手術しないほうがいいんでしょうか?」といった類の質問がたいへん多かったことを覚えています。
「生活習慣病を見つけて医師の診断を受けると早死にしやすい」
「死亡率が下がるのではなく逆に上昇する」
はなはだショッキングな話ですけど、これは1991年、「JAMA米国医師会誌」という著名な医学誌に掲載されたので、わが国でも医師はご存じのはず。発表当時とても評判になったそうです。
しかし一般患者は教えてもらえないままです。
1980年代、著者は日本で初めて実施したことがいくつかあるそうです。
1それまで全国的かつ絶対的タブーだったがん告知を始め全患者に広げたこと。
2悪性リンパ腫の治療成績をそれまでの2-3倍に高めたこと。
3乳がんの治療法として乳房全摘術しかなかった時代。乳房温存療法を導入し、温存療法が標準治療になる道を開いたこと。
しかし、いつまで経っても温存療法の普及が進まないことに業を煮やして月刊誌文芸春秋に論文を発表。これが近藤先生の運命を変えたとか。
「乳がんは切らずに治る」
慶応義塾大学病院外科の名を挙げて批判。当然、院内では村八分。そんなことは覚悟の上だったから全然気にしなかった。雑誌が乳がん患者の間で有名になり、近藤先生の外来を訪れる温存療法希望者が激増。なんと日本の全乳がん患者の1%になった。
ネット記事を見ると「慶応病院は定年まで近藤を追い出さず懐が深い」という感想を目にしますがこれは逆。
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中島孝志(作家・コンサルタント etc)