… … …(記事全文2,465文字)「こころの相続 後編」(五木寛之著・946円・SBクリエイティブ)
「戦争の実態を知らなければ、戦争は敵と戦うことだ、と考えるかもしれない。だが、実はそうではない。戦地では戦闘以前に悲惨な生活があった」と著者。
戦争というと、たいていは勇敢に戦って死んだ戦死が描かれることが多いと思います。
しかし現実には、戦闘による死よりもマラリアや赤痢などの戦病死とか食糧不足による餓死のほうがはるかに多いのです。
確実に死ねるものでもなく。五体不満足なまま、生きながらえるケースは少なくありません。
著者は学生時代、元海軍兵士たちが軍歌をがなり立てているところに遭遇し、「戦争してたのはあんたらだけじゃないぞ」と怒鳴って、一触即発。
その時、彼らが若僧に向かって攻撃したのが「軍人勅諭」でした。ところが、元兵士たちは細部までは覚えておらず、子供のころから暗礁させられていた著者がすらすら語りだすと、ほうほうのていで逃げ出したとか。
この「軍人勅諭」をコンパクトにしたものが「戦陣訓」です。1941年1月8日、ときの陸軍大臣東條英機(のちの首相)が示達した「陸訓一号」のことです。軍人としてとるべき行動規範を示したメッセージですが、「生きて虜囚の辱を受けず」という一文がよく知られています。
これ、意味があります。中国兵(毛沢東率いる八路軍、蒋介石の国民党軍)・ソ連兵につかまる
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