… … …(記事全文2,707文字)「哀しみに寄り添う 伊集院静傑作短編集」(伊集院静著・715円・双葉社)
「小説は哀しみにくれる人を救うことはできない。ただ、寄り添うことはできる」
2011年3月11日の東日本大震災で、自身が被災した際に著者が語った言葉。
大切な人を失い哀しみのただ中にいる人、人生の希望を失い悲嘆にくれる人・・・・・・そんな人たちの哀しみに寄り添う、伊集院静さんの傑作短編集。
物語の登場人物も連れ合いや我が子、家族を失いながらも、前を向いて歩こうとする。そんな姿が読者の心に小さな希望の光を灯すことを願って・・・。
「夕空晴れて」(『受け月』)「くらげ」(『乳房』)「春のうららの」(『三年坂』)「えくぼ」(『ぼくのボールが君に届けば』)「バラの木」(『駅までの道をおしえて』)「川宿」(『眠る鯉』)・・・6編はそれぞれ初期作品集から。
夫を5年前に癌で亡くした女親。小学4年の息子とのキャッチボール。
野球部だった夫のゲームは見に行ったことがあるけど、野球のことなどなにも知らない。
ある日、息子の試合を見に行くと、ゲームにはまったく出してもらえず、上級生たちのお世話係として下働きするだけ。
「たかが少年野球じゃないの そんなにゲームに勝ちたいの」
一度、監督に聞いてみよう・・・。
「小田君もゲームに出られるようになります。先輩の話をすると目が輝きます。会長は小田は目がいい、と褒めていました。先輩に野球を教えた人です。名選手にならなくたっていいんですよ。自分のためだけに野球をしない人間になればいいと思っています」
「ベースボールは人間にいろんなことを教えてくれるものです。いい息子さんだ」と・・・。
「いつかこいつとキャッチボールができるかな」・・・夫の言葉が不意に耳の奥に聞こえてき
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中島孝志(作家・コンサルタント etc)