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稲葉義泰のミリタリーレポート ─軍事と法から世界を見る─

稲葉義泰(国際法・防衛法制研究家/軍事ライター)

稲葉義泰

台湾に関する日米の認識(後編)

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00255/2022073123000097612 //////////////////////////////////////////////////////////////// 稲葉義泰のミリタリーレポート ー軍事と法から世界を見るー https://foomii.com/00255 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●台湾に関するアメリカの認識 1979年の米中国交正常化に伴い、アメリカはそれまで台湾との間で結んでいたその正式な外交関係を中国へと移行させました。しかし、これによってアメリカが台湾を見捨てたというわけではありません。  まず、アメリカの中国と台湾の問題に関する立場ですが、アメリカは先ほど「一つの中国原則」のところで触れた中国側の台湾に関する主張に関して、「中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法政府である」という点については「承認する(recognize)」とする一方で、「世界中に中国という国はただ一つであり、台湾は中国の不可分の領土である」という点については「認知する(acknowledge)」としています。「認知する」という言葉は、中国側がこのように主張していることを「知っている」ということで、これを「認めた」わけではないと解釈できます。従って、アメリカは中国との国交を正常化したとはいえ、台湾問題に関しては中国側の主張を全て認めたわけではないと解釈出来るわけです。  その上で、アメリカは、現在に至るまで台湾との間で非公式の関係を維持し続けており、台湾には事実上のアメリカ大使館とも言える「米国在台湾協会(AIT)」が設置されています。さらに、米中国交正常化が行われた直後の1979年4月10日には、この米台間の非公式関係を法的にカバーする法律として、アメリカは「台湾関係法」を成立させました。  台湾関係法では、その名の通りアメリカと台湾との間での交流等に関するさまざまな事項が規定されていますが、この中で、アメリカは中国が平和的な手段以外を用いて台湾の将来を決定しようとする場合、これは「西太平洋地域の平和と安全に対する脅威」であり、アメリカの重大な関心事であることが明記されているほか、もし台湾の安全などが脅かされる事態が発生した場合には、大統領および議会は憲法の規定に従って「とるべき適切な行動を決定しなけれぱならない」とされています。ただし、ここにはアメリカが台湾の防衛義務を負うとまでは書かれてはいません。その点で、アメリカがその他の国との間で結んでいる防衛条約などとはその性質が少々異なります。  さらに、台湾関係法では、台湾の自衛能力を維持するべく、アメリカは台湾に対する「防御的兵器」の提供を行うことができると規定されています。これに基づき、歴代アメリカ政権は台湾に対して戦闘機やミサイルなどさまざまな兵器を輸出してきましたが、とくに後述するトランプ政権下の2019年および2020年には、過去最大規模の武器輸出が承認され、これらの兵器が台湾の防衛力を大きく向上させることが期待されています。
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