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稲葉義泰のミリタリーレポート ─軍事と法から世界を見る─

稲葉義泰(国際法・防衛法制研究家/軍事ライター)

稲葉義泰

サイバー攻撃と国際法(後編)

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00255/2022043019531293989 //////////////////////////////////////////////////////////////// 稲葉義泰のミリタリーレポート ー軍事と法から世界を見るー https://foomii.com/00255 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●サイバー攻撃に関する諸問題  サイバー攻撃に関しては、それが単なる犯罪行為なのか、それとも国際法上の義務に違反する国際違法行為なのか、そして場合によってはそれが武力行使に該当するのか、といった問題があります。  まず、軍隊や治安機関といった国家機関に所属しておらず、さらにそうした機関からの指示などを全く受けていない個人またはその集団が、他国のコンピューターシステムなどに侵入したり、そこで何らかの情報を盗み出したというような場合には、これはあくまでもその個人または集団による犯罪行為という扱いを受けます。そのため、被害国の捜査機関が犯人を特定した場合には、その犯人が所在している国の捜査当局に協力を要請し、最終的にはその国で訴追されるか、あるいは被害国に犯人の身柄が引き渡されることになります。  一方で、国家機関、もしくは国家機関による指示などに基づいて活動していた個人や集団による他国へのサイバー攻撃については、一定の要件のもとに、これは国家による行為と見なされます(これを「行為が国家に帰属する」と言います)。この場合、当該サイバー攻撃が相手国の主権を侵害したり、なんらかの国際法上の義務に違反する性質のものであった場合には、国家は当該サイバー攻撃に関する責任を負うことになり、当該違法行為の中止や、損害を補償する義務が発生します。  一方で、サイバー攻撃が一定の規模や効果を伴い、それが物理的な手段による攻撃(たとえばミサイルによる攻撃など)と同等の被害を生じさせるものである場合には、当該サイバー攻撃は被害国に対する武力行使として整理される可能性があります。たとえばアメリカは、人を殺傷したり著しい物的損害を与えたりするなど、物理的な手段による攻撃と同様の被害を生じさせるサイバー攻撃に関しては、その攻撃の主体(国家機関なのか、それともテロリストなのかなど)や意図といったその他の要素を評価したうえで、これを満たすサイバー攻撃は武力行使に該当するとしています。  また、たとえばフランスやオランダなどを含むいくつかの国は、たとえば金融・経済システムが大きな被害を被るなど、必ずしも物理的な被害が発生していないようなサイバー攻撃であっても、これを武力行使と捉えることは排除されないとの見方を示しています。
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