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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「IS戦闘員が母親を処刑」というニュースに思う(続)
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年1月17日第51号 ■   ==============================================================   「IS戦闘員が母親を処刑」というニュースに思う(続)  ==============================================================  標記のメルマガを書いた時、いつの間にか尊属殺人罪の規定が廃止されていた事について、読者からの情報提供を求めた。  多くの読者からメールをいただいたので、遅ればせながら謝意を表して以下の通り報告させていただく。  尊属殺人の廃止に至る経緯はおおよそ次のごとくだ。  すなわち、昭和48年の最高裁大法廷判決で刑法の尊属殺人罪の規定について違憲判決が出た。  ただし、この判決は、尊属殺人罪の規定そのものが法の下の平等に反して違憲ということではなく、尊属殺人罪の規定自体は違憲ではないが、法定刑が死刑か無期懲役しかないことが重すぎて違憲であるという判決だった。  事件は長年父親から虐待を受けていた女性がやむにやまれず父親を殺害したもので、法定刑が死刑か無期懲役しかないと、情状酌量によって刑の軽減を最大限図ったとしても、懲役3年6か月が限度で、執行猶予が付けられないため(執行猶予は懲役3年以下の場合にしか付けられない)、尊属殺人罪の法定刑が重すぎて違憲であるとして、執行猶予付きの判決を下したものであった。  こうして昭和48年の判決は尊属殺人の規定そのものを違憲としたものではなかったため、判決後直ちにこの規定が削除されるということにはならなかった。  しかし、この判決以後、実務上は、尊属殺人であっても、検察官が普通の殺人罪で起訴、求刑することが行われ、尊属殺人罪の規定は事実上死文化していった。  そして、平成7年に、刑法全体をカタカナ書き文語体からひらがな書き口語体に改めるという法律改正が行われた際に、尊属殺人罪の規定は削除され今日に至っているという。  なるほどそうだったのかと知った。  最初の判決が出たのはずいぶん昔の事だ。  そしてなし崩し的に尊属殺人罪はなくなっていったという事だ。  私の記憶にないのも頷ける。  私が参考になったのは、多くの読者が尊属殺人罪に反対の意見を持っていた事だ。  確かにあらゆる殺人事件にはそれぞれの固有の因果関係がある。  それを尊属殺人罪規定を設けて、一律に普通の殺人罪より重く罰するとすれば、この昭和48年のように不合理が生じる。  だから尊属殺人罪の規定は廃止さるべきだっただろう。  しかし親子が殺し合うというのはあまりにも悲しすぎる。  ましてや子供が母親を殺す、あるいは母親が自らの子供を殺すといのは、たとえどのような事情であったにせよ、悲しい。  最近は理由にならない理由で母親が我が子を殺す事件が起きている。  いつのまにか日本はこんな国になってしまったのか。  そんな時は、すべては安倍政治が悪いのだと思う事にしているが、これはもちろん安倍首相にとっては不当な言いがかりである。  情報提供や意見をお寄せいただいた読者には、私の勝手な問い合わせにお付き合いいただき、改めて感謝させていただきます。ありがとうございました(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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