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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

 イラン原油輸送特別措置法案があっさり成立する背景を考えてみる
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年6月14日第456号 ■   ==============================================================   イラン原油輸送特別措置法案があっさり成立する背景を考えてみる  ==============================================================  イラン産原油輸送特別措置法案なるものが与野党の合意であっさり 成立するという。  きょう(6月14日)の各紙が小さく報じている。  誰もこの法案について問題視しないけれど、この法案があっさり成立 する背景を私なりに考えるとこうだ。  まず何と言ってもなぜこのような法案が急遽必要になったかという事だ。  それはいうまでもなく米国の対イラン制裁がある。  米国の対イラン制裁措置により欧州連合(EU)は7月以降、域内の保険 会社にイラン産原油を海上輸送するタンカーへの再保険を禁止することに なりそうだという。  我が国はイランからの原油輸入そのものは米国の制裁対象から外される ことになったが、保険を利用しにくくなると原油輸入会社は輸入を止める ことになるだろう。  だから国が肩代わりして保険を払う仕組みをつくる必要がある。それが この法案なのだ。  そうすることによってもちろん国民生活は助かる。  しかしこの法案で本当に助けられるのは原油輸入会社である。  その予算枠は最大約6000億円という。もちろんこの予算が直ちに 使われるという事はないが、いざとなれば使われるのである。  これはまぎれもなく予算関連法案である。  それがあっさり通る。  これを要するにこの国の予算配分は、国民が直接裨益する予算につい ては議論紛糾して後回しにされるが、企業や組織が裨益する予算につい ては優先的にあっさり認められるということだ。  政治は常に票になる圧力団体の声を優先し、組織を持たない一般国民 の声を後回しにする。  その一方で、予算の原資である税金については、取りやすい一般国民 (組織に属さない弱者)からあっさり増税して召し上げる。  これが政治の現実なのである。  それに加えてからもう一つ。  なぜこんな法案が必要になってきたのかという事だ。  それは米国の対イラン政策にある。  そもそも米国の対イラン制裁がなければこんな法案など必要はない。  米国の対中東政策が正しければイランと米国との間の緊張もなかった はずだ。  もっと言えば中国のように独自の中東外交を行なっていれば米国の イラン制裁があってもその影響から免れることができる。  このイラン原油輸送法案は対米従属政策のツケが国民へのしわ寄せと なって返ってくる典型例である。  あらゆる政策は予算配分の問題である。  そして予算配分に際しては政治的に声の強い企業、圧力団体が優遇 される。  あらゆる政策は予算配分の原資である税制とつながってくる。  そしてその税制もまた政治的に声の強い企業、圧力団体が優先される。  そしてあらゆる政策は対米従属策から無関係ではありえない。  イラン原油輸送法案がまともな議論なくあっさり成立する背景にこそ、 この国の政治の現実が見事に象徴されている。  そう思って私はイラン原油輸入法案の成立の記事を読んだのである。                                                               了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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