□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月15日発行 第182号 ■ ================================================================== 原発事故の情報は隠蔽してはいけない ================================================================== いたずらに危機を煽ることは人心をパニックに追いやる。冷静に。 そう政府は繰り返す。 それはその通りだ。 私のような臆病者はすぐ先走る。 地震が起きたとき交差点で止まっていた私は、車が転倒する程のゆれ を前にして思わず飛び出そうとした。 みな冷静に車にとどまっているのを見て自らの臆病を恥じてふたたび 車のドアを閉める始末だ。 パニックはいけない。 しかし今度の大震災に関する情報はあまりにも乏しい。 特に私が恐れているのは原発事故だ。 日本人は核アレルギーだからなどと、テレビの解説者はしたり顔で言って いたがそんな話ではない。 多くの解説者が楽観的な見方を述べている中で、解説者の一人が、その 危険性の深刻さを強調していた。 どっちが本当なのか。 枝野官房長官は頻繁に記者会見を繰り返すが、その説明を聞いてもいつも 何もわからない。 菅首相に至っては「東京電力からの報告が遅かった」と言い訳をする 始末だ(3月14日読売)。 情報が遅い、早いはいい。 本当の事を教えてもらいたいのだ。 風向きによっては避難勧告の20キロよりはるかに離れた場所で放射線 汚染が見つかっているという。 私の住んでいる那須塩原市は事態の推移如何では一瞬にして被爆区域に 飲み込まれてしまうだろう。 テレビの解説では、このまま原発修理が進まないと危険度4から危険度 5(スリーマイル事故の危険度)まで一気に進む、と警鐘を鳴らす者も いる。 冷静を呼びかけるだけでは不十分だ。 どうすればいいか。そして政府は住民の避難にどういう支援を行なう のか。それを言ってもらわなくて住民の不安はつのるばかりだ。 そう思っていたら、3月13日の日経新聞がロンドン発の記事として、 こういう記事を配信していた。 すなわちウィーンの国際原子力機構(IAEA)の当局者は12日、 事態の進展を受け、日本で何が起きているのかについて日本政府に 情報提供を求めているが日本から寄せられる情報が乏しいため苛立ちを 強めているもようだ、と。 やはりそうか。 そう思っていたら3月14日の読売新聞を見て驚いた。 「日本の対応、IAEAが評価」という見出しの記事を見つけた。 どっちが本当なのだ。 記事を読んでみるとさらに驚いた。 IAEAの事務局長である天野之弥氏は日本語によるビデオ声明を 発表し、「日本当局は困難かつ刻一刻と変化する状況の中で、必要な 情報の収集と完全の確保にあたっている」と、日本側の対応を評価した、 という記事なのだ。 何のことはない。外務省の命令を受けた外務官僚天野之弥氏の世論 対策なのだ。 それを読売が日本国民に向けて情報操作の片棒を担いでいる。 この後に及んでこんな姑息な事をやっている官僚たちにこの国を救う ことはできない。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)