□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年3月11日発行 第177号 ■ ================================================================== 爆音訴訟賠償金の米国負担分を肩代わりする日本政府 ================================================================== こんなにも重要なことが、こんなにも小さな記事で済まされていい のだろうか。 3月10日の朝日新聞は一段の小さな記事で次のように報じていた。 すなわち、9日の参院予算委員会で社民党の山内徳信議員の質問に 対し、小川勝也防衛副大臣が答えたという。 日本政府が米国が払うべき賠償金までも肩代わりした、と。 在日米軍基地の周辺住民が起こしたいわゆる爆音訴訟で、1月27日、 最高裁は原告(住民)の上告を退ける決定を下した。 これにより2009年2月の福岡高裁の判決が確定した。 それは米軍機飛行の差し止め要求は退けるかわりに一定の賠償を認 めるというものだ。 国の住民に対する賠償については、日米地位協定で日米両政府の分担 が決められているという。 すなわち米軍の公務中の行為による民間人への損害賠償については、 米軍だけに責任がある場合は賠償額の75%、日米双方に責任がある 場合は50%を米国が支払うと定めているという。 そもそも米軍だけに責任がある場合でも日本が分担してやるという この日米地位協定自体が大問題であるが、米国はこの協定さえ従わない のだ。 住民に対する賠償支払いを求めた判決が下されたというのに、米政府 は従わない。日本政府の支払い請求にさえ応じないことがわかったのだ。 この事は沖縄返還以来続いている。 すなわち米国は沖縄返還時に原状回復費を日本に肩代わりさせよう とした。 日本政府はその理不尽を国民に説明できなかったので密約でごまか した。 その日米密約が政権交代によって白日の下にさらされた。 しかし、今度の件は密約どころではない。 堂々と日本政府は判決が求める賠償金までも日本が肩代わりして いる事を認めたのだ。 米国が協定違反をしていることを認めたのだ。 それを菅民主党政権は認めているのだ。 認めるどころか肩代わりしているのだ。 金がないので国民生活までしわ寄せしているというのに。 こんな大きな事件がほとんど報道されない。 これは日米密約よりも深刻な現実だ。 もはや対米従属関係の矛盾は爆発寸前まで来ている。 了
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天木直人(元外交官・作家)