□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月15日発行 第105号 ■ ============================================================= 八百長問題と裁判所の責任 ============================================================== 今度の八百長問題の大騒ぎの裏で大手メディアが決して言及しない ことがある。それは誤った判決を下した裁判所の責任追及である。 週刊現代は2007年に八百長疑惑を報道した。これを日本相撲協会 が名誉毀損で提訴し、昨年秋講談社側に4785万円の賠償と記事取り 消し広告掲載を命じる判決が確定した。 それから三ヶ月ほど後に今回の八百長騒ぎである。 ここまで証拠が出てきたのだ。あの時の判決はなんだったのか、と いうことになる。 それにも関わらず八百長相撲裁判の誤りを書いた大手新聞は皆無だ。 私が知る限りでは、月刊「創」編集長の篠田博之氏が東京新聞の「週刊誌 を読む」というコラムで2月6日と13日の二度にわたって触れている だけだ。 そして2月8日の東京新聞が、講談社が再審請求を行なう事を検討して いる、と書いていたぐらいだ。 それらの記事も、しかし、日本相撲協会の虚偽証言を批判する事が中心で、 裁判所の責任を厳しく追及することはしない。 そんな中で発売中の週刊現代2月26日号が「偽りの八百長裁判」全記録、 という特集記事を掲載した。 てっきり裁判所を追及するかと思っていたら、そのなかで次のような くだりがあるだけだ。 「裁判所は本誌が用意した多数の陳述書や証言に耳を貸さず『八百長は ない』という相撲協会の主張に一方的に軍配をあげた・・・はじめから 八百長はないものと決めつけていた・・・」 これが精一杯である。 そう思っていたら今日(2月15日)の産経新聞が講談社が日本相撲協会 に対し、損害賠償と名誉回復を求める通告書を14日送付し、1週間以内に 誠意ある回答がない場合、法的措置を取るとした、と報じている。 そこには2月8日の東京新聞が報じていた裁判所に対する再審請求は すっぽり抜け落ちている。裁判所に対する責任追及はない。 冤罪や不当捜査で、警察、検察は国民の批判の目にさらされる事になった。 ところが裁判所だけは、どんなに間違った判決をしても何の責任も問われ ないままだ。裁判所だけが聖域になっている。 国民もメディアも、あたかも裁判所に睨まれると最後だ、といわん ばかりだ。 この不合理さについて私はメルマガで何度となく書いてきた。 八百長問題の騒ぎに唯一意味を見つけるとしたら、この裁判所聖域化の 不条理に世論が気づくきっかけになる事だと思う。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)