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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

戦争に加担した菅内閣と平和外交を捨てた日本の政治家たち
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月27日発行第226号 ■       ===============================================================          戦争に加担した菅内閣と平和外交を捨てた日本の政治家    ===============================================================    私は、皆と同じように11月28日という日を注目している。  そしてその日がどのような日になろうとも、私の思いは変わらない。  その思いをメールマガジンに書き残して後日の批判を待ちたいと思う。  注目点はもちろん二つだ。朝鮮半島の情勢と沖縄知事選である。  米韓軍事演習がどのような形で行なわれようとも、そしてそれに対して 北朝鮮があらたな軍事攻撃で応戦してもしなくても、すでに戦争は始まって いる。  専門家が指摘しているように今度の米韓軍事演習はただの軍事演習では ない。限りなく戦争に近い挑発的、威嚇的軍事行動だ。  その軍事行動に日本は公然と加担した。  米国原子力潜水艦が、そしてイージス艦が、日本の港から堂々と出撃した のだ。この事は永久に記憶されるべきだ。  日本政府やメディアは、そしてメディアに登場する言論人達は、誰一人と してそれに疑問を呈しなかった。  国会は11月26日、衆参両院で北朝鮮非難決議を全会一致で採択した。  北朝鮮の軍事行動を非難するのはいい。非難さるべき行動だ。  しかし今は朝鮮戦争が再発したのだ。戦争である以上、戦争当事者双方 に自制を求めるべきなのだ。米韓に対する軍事演習の延期をもまた強く求め なくてはならなかった。  国会の中で誰一人として堂々とそれを述べる政治家がいなかった。  菅政権の外交は米韓側に立って北朝鮮と対決することとなった。  戦争のエスカレートに反対する中国を評価するどころか、その中国に 北朝鮮に圧力をかけろと求めた。  恥ずべき愚策だ。  憲法9条を誇る日本こそ中国に先駆けてそれを訴える国だった。中国と協力 して双方に自制を求める平和外交を行なうべきだった。  それは必ずしも中国に加担するということではない。  中国だけでなく東南アジア諸国連合(アセアン)もまた26日、関係各国に 自制を求めた(11月27日日経)。これが当然なのだ。  中国と日本の立場や利害は異なるかもしれない。  しかし戦争拡大は何があっても防がなければならないという一点において 日本は中国の側に立つべきだ。中国と協力するのだ。  対米従属が党是の自民党は、この戦争を政局に結び付けて菅政権を揺さぶった。  対米従属のメディアは北朝鮮の非道さばかりを報じる。  メディアに影響された世論もまた北朝鮮強硬論に塗り固められた。  そんな中で、死に体政権になってなお政権に固執する菅首相にとっては、 もはや取るべき政策は対北朝鮮強硬論しかない。  尖閣問題の対応で追い込まれた菅首相は、中国に対し強攻策を申し入れる ほかはない。  それでも菅首相が平和を尊ぶ政治家であれば、政治生命を賭して平和外交に 舵を切る事はできた。その事を私は繰り返し助言した。  それができなかったということは、いや、最初からその気がなかったことは、 菅直人という政治家は本物の護憲政治家ではなかったことを明らかにした。  菅首相は憲法9条を無視して戦争に加担した首相として永遠に歴史にその名を とどめるであろう。最悪の首相となった。  同じ事は社民党、共産党の政治家にも言える。  福島社民党党首は、戦争拡大の抑止の重要性を言う事は言う。しかしそれは おざなりだ。本気ではない。本気で菅首相を批判していない。  民主党との連立を優先する社民党や労組は、平和をすべてに優先する政党や 組織ではないということだ。自らの生き残りを優先するのだ。  共産党もまた同様だ。あれほど平和を訴えてきた政党が、そして政権政党を 目指さない唯一の政党が、平和を訴える事に何をためらいがあるというのか。  平和を唱える公明党が戦争を容認する政党であることはイラク戦争を認めた 時点で証明ずみだ。  今の日本の政党の中で平和をすべてに優先する政党はない。  今度の北朝鮮の攻撃で明確になった事がある。  それは朝鮮半島においては38度線という国際的に認められた明確な休戦 ラインがあるが、海上ではそれがなかった、それゆえに戦争が継続していた、 という事実だ。  いわゆる北方限界線なるものが、いかに北朝鮮に不利な形で引かれたもの であるか、そしてその限界線が、国連軍と言う名の在韓米軍が一方的に設定 したものであることが、明らかになった。北方限界線の不当性については、 専門家もメディアも一様にこれを認めている。  北朝鮮はこれを認めず、北方限界線近辺では絶えず戦闘が繰り返されて 来た事が明るみにされた。まさしく朝鮮戦争は終わっていなかったのだ。  そんな戦争の中で沖縄知事選挙が行なわれる。  今度の沖縄知事選挙はこれまでの知事選挙とは比べ物にならない大きな 意味を持つ選挙である。  それは、伊波候補が単に沖縄の基地軽減を訴えるだけでなく、その 根底にある日米同盟に反対する事を明確に訴えて選挙を戦っているからだ。  日米同盟があるからこそ日本は今度の朝鮮戦争において米韓の立場に立た ざるを得ないのだ。戦争の一方に加担させられるのだ。  日米同盟重視一色の今の日本において、そして朝鮮戦争が熱戦となる中で、 もし伊波候補が勝利すれば、それは沖縄県民が日本政府の誤りを咎めたという ことだ。  本土の国民ができなかった事を沖縄住民が見事に行なったという事になる。  沖縄から憲法9条を守る狼煙を上げた、ということだ。  それは革命的なことだ。  だから米国と日本はそうさせない。  伊波候補は勝てない。たとえ勝っても日本政府に押しつぶされる。  前原外相は26日の記者会見で、どの候補が勝とうとも普天間移設の日米 合意はしっかり履行していくと述べたという(11月27日毎日)。  とんでもない傲慢発言だ。  これが菅内閣の閣議決定であるとすれば菅内閣は沖縄県民の敵だ。菅首相 にはあらためて失望させられる。  もしそれが前原首相の意見であれば、このような発言を許す菅首相の指導力 のなさにはもっと失望する。  28日の沖縄知事選挙で伊波候補が勝利すれば革命的だ。  だからこそあらゆる手を使って伊波候補の勝利は阻止されると思う。  しかし沖縄の闘いはそれで終わりとはならない。  そこから沖縄の本当の闘いがスタートする。  伊波氏は敗北の直後に沖縄平和党の結党宣言をすべきだ。  そして沖縄から国政に参加して平和外交を訴える決意を示すのだ。  その時こそ私が日本の政治に希望を見つける時である。                               了

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