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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

丹羽駐中国大使の姿が見えない。声が聞こえない。
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月26日発行第223号 ■       ===============================================================         丹羽駐中国大使の姿が見えない。声が聞こえない。     ===============================================================  私は伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏が駐中国大使に政治任命された時、 これを高く評価し、歓迎した一人である。  もはや主要国の大使職を外務官僚が独占する時代ではない。日本を代表 する各界の要職にある人物が、その知見と覚悟をもって日本を世界に知ら しめる時代である。  そう思ったからだ。その思いはいまも変わらない。  次期駐米大使の人選がすっかり噂されなくなった。  現職の藤崎一郎大使の任期はとっくに終わっている。これ以上藤崎氏を 駐米大使にとどめて置くほどの仕事をしてきたわけではない。  それなのに大使の交替が遅れているのは菅・仙谷民主党政権が政治主導力 を失っているからだ。  そういう場合は外務省の巻き返しがあって、外務官僚から大使を起用する という動きになるのだが、その動きさえない。  それが出来ないのは外務官僚の中に人材がいないからだ。  次期駐米大使を誰にするかは今後の日米関係にとっても極めて重要である。  せめて菅首相は、最後ぐらいは見事な政治任命をしてもらいたい。  その人選は、取りも直さず菅首相の対米外交の正体を国民の前に明らかに することになる。  石にかじりついても、次期駐米大使を任命するまで菅首相には総理を続けて もらいたい。  主要国大使の政治任命が定着するためにも、丹羽駐中国大使の活躍は重要だ。  ところが、尖閣問題をめぐって日本中が大騒ぎしていた時、丹羽駐中国大使 の姿がまったく見えなかった。  私はそれを残念に思う。  APEC首脳会議の際に日中首脳会議が行なわれるかどうかが大問題に なっていた11月13日。東京新聞において、丹羽大使が12日に一時帰国した と報じられた。  首脳会談が行なわれる時は大使が一時帰国してその会議に同席する事が慣例 になっている。  だからこのニュースは珍しくも何でもない。  私が驚いたのは、この帰国が7月末に北京に着任して以来始めての帰国で ある、と報じられていた事だ。  考えられない事だ。  ただでさえ重要な日中関係である。おまけに尖閣問題が発生したのは9月 である。  このような重大な時期に、日本を代表した特命全権大使が、首相に情勢報告 や意見を述べるために一度も一時帰国しなかったということは有り得ない事だ。  菅首相は丹羽大使の意見を聞きたいと思わなかったのだろうか。  丹羽大使は菅首相に語るべき意見はなかったというのか。  北京と東京は三時間で往復できる。  なんでも節約の折、公費で帰国するのが困難ならば私費で帰国できたはずだ。 大使の給料からすれば大した額ではない。  たとえ外務官僚が反対しても(外務官僚が反対する理由はどこにもないが) 丹羽大使は特命全権大使だ。その気になればいつでも帰国できるはずだ。  そう思っていたら11月18日の各紙が次のように報じた。  丹羽大使が11月17日にはじめて地方視察をしたという。尖閣問題による 日中関係の悪化で延期していたが、一段落してやっと実現したという。  なんという消極的な仕事ぶりであろうか。  日中関係が悪化している時こそ大使が中国各地で正しく発信すべきでは なかったのか。それが大使の仕事である。  日本に一時帰国もせず、地方に赴くわけでもなく、4ヶ月もの間、丹羽大使 は北京で何をしていたのだろうか。  今からでも遅くない。丹羽大使はその存在感を見せてほしい。  折から朝鮮有事に果たす中国の役割は重要になっている。  中国政府との接触を密にして、日中協力して米韓と北朝鮮の敵対関係の エスカレート回避に尽力してほしい。  まちがっても日本政府の片棒を担いで、日韓米による北朝鮮包囲網に加われ と、中国に注文をつけるような愚をおかさないでほしい。  緊張緩和に向けて米韓と北朝鮮の双方に自制を求める中国こそ正しいのだ。  その役割は、日本こそ率先して果たすべきなのだ。  いまからでも遅くない。  日本政府は中国政府と協力して緊張緩和を最優先すべきだ。  丹羽大使にはそのような直言を期待する。  それを言えるのは丹羽大使しかいない。  日本がそういう政策を鮮明にすれば中国はこれを高く評価する。  これこそが日中関係改善の最良の政策でもある。  その直言こそ政治任命の駐中国大使に期待される事なのである。  外務官僚出身の大使には決して真似のできない事である。                            了

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