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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

今回のAPEC首脳会議とは何だったのか
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月13日発行第199号 ■       ===============================================================             今回のAPEC首脳会議とは何だったのか     ===============================================================  APEC首脳会議はまだ、終わっていない。いやむしろ今日から始まる。  しかし、その結果は明らかだ。  洪水のように流される大手メディアの報道では何がポイントなのか わからない。  だから先駆けて私の独断で一言で解説してみることにする。  APECについて聞かれた通行人が、「首脳会議の事と厳戒警備の事ばかり で、何をする会議かわからない」、とテレビカメラの前で語っていた。  これには思わず笑ってしまった。  たしかに報道を見るだけではそれぐらいしかわからない。  今日(11月13日)の読売新聞は、胡主席と菅首相がソウルのG20で立ち 話した事を一面で報じていた。  その内容を読むとまた笑わされる。  「会議が終わる時に振り向いたら、(胡主席が)通っていたので、『やあ、 やあ』と言葉を交わした。(胡主席が)『横浜に行きますから』というから、 『横浜でまたお会いしたいですね』と、そのくらいで終わりました」  これが、菅首相がG20の後で日本の記者団に述べた事だ。    それを読売新聞が一面で「胡主席と立ち話」と報じたのだ。  話はそれるが、私が胡主席であれば勿体をつけて最後に日中首脳会談に 応じるだろう。  おそらくそういうことになるだろう。  これがAPEC首脳会談のビッグニュースになり、四面楚歌の菅政権も 一息つく事になる。  またもや中国に借りをつくることになる。  しかしもちろんAPEC首脳会議は首脳会談の実現だけではない。  ましてや厳戒警備が奏功し日本の警備体制の素晴らしさを世界に示す事 ではない。  それはそれで結構な事であり、警備に携わる者たちには敬意を表したい が、それだけではない。  今度のAPEC首脳会談はアジア・太平洋地域の自由貿易促進について 話す会議なのだ。  それでは、その肝心の話し合いはどういう話し合いで終わるのか。  今度のAPEC首脳会議は今後のアジア・太平洋地域の経済にどのような 影響を与えるのか。  一言で言えば、今度のAPEC首脳会議は、一方において米国の輸出拡大の ために、米国にとって都合のいいあらたな自由貿易体制をアジア・太平洋地域 で作ろうとする米国の要求があり、他方において、中国、インドをはじめと した新興国がそうはさせないと注文をつける。  その複雑な利害が表面化し、話し合いがまとまらず、その交渉を今後とも 継続していく事を確認する、そういう会議で終わる、ということである。  この事はAPEC首脳会議の直前にソウルで開かれたG20首脳会議の結果 とあわせて考えるとより明らかになる。  G20は、為替政策で各国が衝突、原則論に終始して具体的な結論はすべて 先送りされた。人民元の切り下げを迫った米国は、金融緩和、ドル安政策が 世界にバブルを起こすと批判され孤立した。  リーマンショックの反省からIMFにかわるあらたな金融・通貨体制づくり の必要性が叫ばれて久しい。  その一つのチャンスであると鳴り物入りで開かれたG20であったが、結果 はこれだ。  WTOにかわる自由貿易体制づくりが必用であるのに、そしてその中心に 位置づけられるAPEC地域の首脳会議において、必ずしも米国の思い通り のルールづくりが進まない。  これを要するに、戦後の圧倒的な米国の経済力の下でできたGATT- IMF体制が時代遅れになる一方で、それに代わるあらたな国際金融・貿易 体制が、もはやかつてのように米国の都合だけでは決められない、そういう 時代になった事を見せつけた会議であったという事である。  これからは、息の長い、複雑な交渉が始まる。  日本は対米従属から自立し、日本の国益を最大にする戦略を真剣に考えな ければならない。  その必要性を痛感させる会議であったということである。                              了

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