□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年8月14日発行 第55号 ■ =============================================================== 円高に無策な菅・仙谷民主党政権とその対米従属ぶり ================================================================ 米国の財政状況が深刻なのは何も日本だけではない。 日本の親分である米国の財政状況がここまで深刻な状態にあることを示す 驚愕的な記事を見つけた。 8月12日の朝日新聞はノーベル経済学賞受賞者(08年)のポール・クルーグ マン米プリンストン大学教授の「真っ暗になる米国」というコラムを掲載して いた。 これは8月9日のNYタイムズに掲載されたものを邦訳して転載したものだ。 それを要約すればこうだ。 「・・・米国の至るところで街灯が消されつつある。 舗装道路を維持できないために砂利道に戻す地方政府が相次いでいる。 すべての子供に基礎教育を提供した最初の国家であった米国は、今や 教師を解雇し教育関連の数々のプログラムを撤廃している。 米国は、明かりのない、未舗装の砂利道の上で、どこにも行けずに立ち 往生している・・・」 ノーベル賞を受賞した米国の経済学者が米国の大手紙にここまではっきりと書い ているのだ。 米国の財政危機は深刻である。 だからこそ米国はなりふり構わずその赤字負担を他国に押しつけて生き延び ようとする。その格好の餌食が日本なのである。 米国に余裕が無くなり、かつてないほどに日本を食い物にしようとしている、 そんなタイミングの時に、米国のことが何もわかっていない菅・仙谷民主党政権 が日本の舵取りを任されている事は、考えてみれば日本国民にとって不幸であり、 皮肉なめぐり合わせだ。 国内の雇用創出を宣言したオバマ大統領の米国がドル安で輸出拡大を図って いる事は素人でもわかる。 しかし菅首相は休養先から「ちょっと動きが激しすぎる」と仙谷官房長官に 懸念を表しただけで事足れりとしている。 せめて官邸に戻り野田財務省や白川日銀総裁を呼びつけて対策を講じる姿勢を 見せるべきだろう。 その一方で、菅・仙谷民主党政権は、来る11月の沖縄知事選では、普天間 代替基地の県外、国外移転を主張する伊波宜野湾市長を、何があっても当選させ ない事を決めたようだ。 北沢防衛相は自公が推す仲井真現知事に勝ってもらいたいなどと口を滑らし、 安住淳選対委員長は、民主党本部と方針が違う伊波氏の支持に難色を示した。 あくまでも米国との合意を押し通すつもりだ。 しかし、その米国は、ゲーツ国防長官が9日の記者会見で1000億ドル (約8兆数千億円)もの国防予算を削減し、大規模な軍組織の解体を発表した (8月11日各紙)。 そして8月12日には、海兵隊の体制さえも見直すと演説した(ワシントン発 時事)。 無策で対米従属的なのは民主党政権や官僚だけではない。 トヨタは、嵌められた事が明らかになっても米国政府に抗議することもなく、 それどころか率先して米国のイラン制裁に協力して輸出自粛を発表した。 内部留保を積み重ねる日本の大手企業は、社員の福利よりも、米国金融資本に 余剰資金を注ぎ込む事に熱心だ。 テレ朝の「報道ステーション」の解説者である一色清朝日新聞編集委員などは、 経済記者であるにもかかわらず、円高は日本経済がまだ世界的に見て評価されて いる証拠だ、などと解説する始末だ。 この国はどう考えても間違っている。 我々は、政府、官僚、大企業、メディアの言う事、行う事を鵜呑みにする事なく、 自分の手で自分を守ることを考えなければならない時期にさしかかっていると思う。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)