□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年8月15日発行 第56号 ■ =============================================================== 安全保障より経済だ ================================================================ 8月15日の読売新聞経済面に、「米GM復活にはなお時間がかかる」、 というニューヨーク発小谷野太郎記者の記事があった。 GMは今週はじめにも株式上場を申請し破綻からの脱却に踏み出すが、その 前途は多難であるという否定的な記事だ。 その一方で8月16日の日刊ゲンダイには「衝撃 米GMと中国がタッグ 日本メーカー壊滅の危機」という見出しのショッキングな記事が掲載されていた。 米国政府と中国政府が手を結び電気自動車で主導権を握る、これがGM再生の 象徴だ、日本メーカーにとって壊滅的な悪夢だ、という記事である。 どちらが正しいか。もちろん後者である。 この日刊ゲンダイの記事は関岡英之氏の「拒否できない日本」(文春新書)の 冒頭部分を思い起こさせた。 すなわち中国が米国に協力することによって米国による世界の建築標準化を 実現する、その事によって中国もまた米国と共に世界の建築業を牛耳る、という 指摘である。 今まさにそれが自動車産業で行なわれようとしているのだ。 米中関係となると、日本では決まって安全保障問題が論じられる。 中国の軍事脅威がいたずらに強調され、その中国の軍事的脅威に対抗する ために日米同盟が不可欠だ、と日本の官民の指導的立場の者から唱えられる。 しかし、中国にしても米国にしても当面の最大の課題は経済だ。 中国は、いかにして13億の国民の生活を底上げして、本物の経済大国を 実現するか、その事が最大の関心事だ。 一方の米国は、未曾有の経済困難から脱却するために国内産業を如何に復活 させるかがオバマ政権の最大の喫緊の課題である。 米国と中国はお互いの経済協力なくしては生き残れない。国をあげて日中 経済協力に専念している。 そんな事もわからずに、日米軍事同盟こそ最大重要にとばかり対米従属に 終始している日本の指導者と大手メディア。 日本の大企業もまた米国政府の方ばかりを向いて戦々恐々としている。 8月15日の大手各紙には、さらに次のような記事が目についた。 日本のお家芸であった太陽電池パネルにおいて、2005年に生産量のトップ 5社のうち4社を独占していた国内メーカーが、10年後にすべて姿を消す見通し が明らかになった、と(産経新聞)。 日本優位の自動車向けリチウムイオン電池製造で、韓国LG化学が米ミシガンに 工場を建設し、オバマ大統領がその起工式に駆けつけた、と。(朝日新聞)。 安全保障より経済である。 安全保障分野で対米従属に忙しくしているうちに、日本は肝心の経済でどんどん 取り残されて行っている。 国民生活のためには経済再生が最も必要なのは日本であるというのに、である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)