□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年8月6日発行 第46号 ■ =============================================================== 核テロをなくすには核兵器なき世界をつくるしかない ================================================================ 今年もまた原爆投下の日がやってきた。核兵器に関する記事で紙面が埋め尽く される前に書いておきたい。 この季節になるとメディアが核廃絶を訴えるのは当然である。 それは勿論原爆記念日に敬意を表するところもあるだろうが、核兵器廃絶を 訴える事は絶対的に正しいからである。 ところが原爆記念日においても核抑止力の重要性を真顔で語る愚か者がいる。 たとえば8月4日の産経新聞の「核の傘離脱は無謀な提言」という社説だ。 秋葉忠利広島市長が6日の原爆の日に読み上げる平和宣言で、米国の核の傘から の離脱を日本政府に求める事を明らかにした事に対する反論である。 たとえば8月5日の産経新聞紙上で語っている田母神元自衛隊航空幕僚長の次の 言葉だ。 北朝鮮のような国でも核を使うぞといえば米国でさえも手が出せない。核兵器は 最大の抑止力だ。だから核廃絶など出来るわけがない。皆が核兵器を持てば戦争は 起きないのだ、と。 しかし、よく考えてみれば核抑止力の重要性を訴えるのは産経新聞や田母神元 幕僚長だけではない。 密約を重ねて米国の核抑止力を認めてきた歴代の自民党政権や、その自民党政権 を否定して政権交代を成し遂げた菅・岡田民主党政権もまた米国の核抑止力を信奉 している。 このような論者や日本政府に読ませたい記事がある。 週刊ニューズウィーク誌最新号(8月11日/18日号)に掲載されている 「『核なき世界』以外に核テロは防げない」という記事である。 この記事を書いたのは核拡散防止の任務に携わった元CIAの秘密工作員バレリー・プレーム・ウィルソン氏である。 ブッシュ大統領のイラク戦争に反対した米外交官の妻で、夫への報復のために CIAの工作員だと身元をばらされた妻である、と言ったほうが知られている。 そのウィルソン夫人が寄せた寄稿である。 彼女はこう言っている。CIAと多くの協力者の勇気ある取り組みによって今の ところ核によるテロは阻止されている。しかし、そうした取り組みに加わった経験 から判断すると、核テロの脅威に終止符を打つためには核兵器を廃絶する以外に 方法はない、と。 さもないと核兵器が世界中に拡散し、いつの日かテロリストが大都市の都心を 焼き尽くすだろう、と。 冷戦時代に核兵器を抑止力として支持した多くの人々が、今ではロシアや中国 との核戦争ではなく、核拡散と核テロが脅威だと気付いている、と。 この脅威をなくすことのほうが、核を保有し続けるどんなメリットにも勝る、と。 これが今の国際情勢の現実である。 そんな事も知らずに、とっくに終わった冷戦構造下の勢力均衡論の発想から抜け 出せず、自分の頭で勝手に作りあげた理屈を唱え続ける日本の核抑止論者や日本政府。 自らの不明を恥じてさっさと核廃絶論者に転向すべきである。 彼らのいかなる核抑止論も、核兵器のテロへの不拡散に携わった秘密工作員の 一つの言葉の前には無力である。 生き残るためには自らを変えることだ。間違いを素直に認めることだ。 了 おしらせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演が8月8日に都内で開かれます。 政治評論家の森田実さんの特別参加を得て次の要領で行ないます。 私の思いを語り、森田さんに私の質問をぶつけます。乞うご期待。 13:35-14:00 天木直人「出版の意図を語る」 14:05-14:45 森田実 「特別講演」 休憩 15:00-16:00 天木直人・森田実対談(司会天木) 16:00-17:00 聴衆との応答(司会天木) 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6)
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)