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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

戦争とジャーナリズムについて考える
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年8月2日発行 第42号 ■        ===============================================================        戦争とジャーナリズムについて考える                                          ================================================================     政権交代が起きたというのにこの政局の混乱振りをどう考えたらいいのか。  その混迷の中で日本の安保政策だけが議論されずに急速に右傾化している ような気がする。  その事にメディアが警告を発するどころか加担しているような気がする。  そこに絶望を感じる。  そう思っていたら手元に届いた月刊マスコミ市民8月号(第499号)に 次の4氏による「戦争とジャーナリズム」に関する対談録を見つけた。    門奈直樹 (立教大学名誉教授 京都産業大学教授)  桂敬一  (ジャーナリスト・元東京大学教授)  藤田博司 (元共同通信記者・元上智大学教授)  与那嶺良彦(沖縄タイムズ東京支社 編集部長)  いずれも私には一面識もない人たちだ。  しかし彼らが語る「戦争とジャーナリズム」についての指摘はこの上なく 的確で鋭い。  それはこの国のメディアが、今も昔も「戦争」に本気で反対してこなかった事 に対する強い批判だ。  そのすべてに私は同感する。ほんの一例をあげればこうだ。  「そもそもこの国は、『いくさ』を考える際、戦争に本当の勝者なんて誰も いないという考え方が、明治政府以降なくなったんじゃないでしょうか。  平家物語にみられるような『いくさ』の虚しさは、ある時期まで伝えられて きました。その名残が与謝野晶子や幸徳秋水、あるいは石川啄木とかにはあった けれど、とうとうメディア文化のなかで主流にはならなかった。  戦争するのは当たり前。既存の帝国主義国家に対抗して、自分たちも帝国主義 国家になりたい。だから『いくさ』に勝つという価値観しかない・・・それが ずっと受け継がれているような気がするのです。この国の本能として・・・」 (桂敬一)  「この国は古い安保を克服できないまま、ますますひどい形で新しい安保に 巻き込まれています。それでもメディアは容認する。これでは天皇制・軍・政府 がアメリカに変わっただけ。だけど政治家やメディアにとっては、そのほうが 安泰な気がして仕方がないのです・・・」(同)  「一番象徴的な事例が、敗戦後の新聞社です。ドイツでは新聞をすべて廃刊に して、ゼロからやり直しました。日本の場合は、新聞社のトップをちょっとすげ 替えただけ。後を引き継いだ人たちも、戦争中は戦争を煽ってきた人たちでした。  戦争責任の所在を明確にしないまま、戦後のジャーナリズムが始まった・・・ それが戦争を歴史的にとらえるうえで、障害になってるのではないか・・・」 (藤田博司)  「イギリスではチルコット委員会という独立調査委員会がつくられて・・・ ブレア元首相とか、当時の財務大臣だったブラウン前首相など81人が証人喚問で 呼び出されています。ブレア元首相の喚問時間は6時間に及びました・・・  この喚問ではメディアも激しくブレア元首相の戦争責任を追及していきました。 つまり国全体があの戦争については真剣に考えており、メディアもいまだイラク 戦争の検証報道を行っています。・・・一方の日本では太平洋戦争に学ぶ・・・ という具合にはいきませんでした。」(門奈)  そのようなメディア批判の中で私の目に留まったのが藤田博司氏の次の発言 である。  「・・・僕はジャーナリストの知的レベルが低いとは思わないけれど、 これまでの日本のジャーナリズムが、そういう記者をつくってしまったところ があるのです・・・」  これを読んだ時、私は7月13日付の毎日新聞「発信箱」の素晴らしい記事を とっさに思い浮かべた。  すなわち毎日新聞西部報道部の三森輝久という記者がこう書いていたのだ。  「・・・沖縄の人たちが民主党に『裏切られた』と感じているのは・・・ 普天間飛行場移設だけではないと思う。  (『集団自決』に軍の強制があったとする記述が教科書から削除された件について)・・・沖縄では歴史の歪曲と受け取られた。噴出した怒りは超党派の県民 大会へとつながった。3年前の事だ・・・普天間と同じだ。  (その時)県民大会に民主党から出席したのが現首相の菅直人氏。地元紙 琉球新報は当時菅氏のこんな言葉を掲載している。  『歴史的意義がある大会だ。代表質問、予算委で正面から取り上げ、検定 やり直しを求める。国会議決も視野に入れていく』。  だが、政権を取った民主党は検定のやり直しに動かなかった。  政権奪取前と後とで、言うこととやることが違う図式。そして、どうして言行 不一致に終わったのか、わかりやすい説明が一切なく、ほうかむりを続けている 姿も普天間と同じだ。  政治に妥協はつきものだろう。だからといって、針路変更の説明を欠いては 不信が募るばかりではないか」  ここまで書かれては菅民主党政権は沖縄を見捨てるわけにはいかないだろう。  こういう記事が書ける記者もいるのだ。  右傾化するメディアにも良識が残っていると思いたい。  今年8月15日の各紙の論調に注目したい。                                   了                                                                                 おしらせ                                                                           「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの 特別参加を得て次の要領で行ないます。  13:35-14:00 天木直人「出版の意図を語る」  14:05-14:45 森田実 「特別講演」         休憩  15:00-16:00 天木直人・森田実対談(司会天木)  16:00-17:00 聴衆との応答(司会天木) 日時 8月8日(日)    午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール    港区赤坂4-18-13    地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分    大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅  4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp                 ユー12ユー9エルオー6)             

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