□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年8月1日発行 第41号 ■ =============================================================== ウィキリークスの衝撃度 ================================================================ 民間の内部告発サイト「ウィキリークス」がアフガニスタン戦争をめぐる 米軍などの機密文書を公表したことが大きな波紋を呼んでいる。 この事を日本の大手新聞が報道したのは7月27日であった。そしてその後も 連日のように報道が拡大しつつある。 なぜこの問題が日を追って大きく報道されていくのだろう。 それはもちろんアフガン戦争の数々の不都合を暴露された米政権が窮地に立た され、それ故に米国内で内部告発者探しや、内部告発サイトの責任者に対する 処罰の動きが加速しているからだ。 米国政府が大騒ぎする問題は世界中の問題となる。 この問題は間違いなく今後も拡大していくだろう。そしてそうなる事を私は 期待する。 なぜか。それは今回のウィキリークス騒動の中にこれからのメディアを考える 上でのいくつかの極めて重要な問題が内包されていると思うからだ。 一つは内部告発の威力と有用性である。 日本では内部告発という言葉にいい響きは無い。それは裏切り行為であり卑劣 だと見なされる。 しかしそれも内容次第だ。ガセネタはもとより私怨による誹謗中傷のたぐいは 確かにそのとおりだろう。 しかし一つの内部告発が権力者の悪を白日に下にさらし、権力者を引きずり下す 事もある。 内部告発は弱者がどうにもならない状況に追い込まれた時の最後の切り札である 時もあるのだ。 内部告発の威力と有用性を日本人はもっと評価してもいい。 二つには、絶対悪と戦う最強の手段こそ内部告発であるという事だ。 「戦争で真っ先に犠牲になるのは真実である」という言葉がある。一旦戦争が 始まれば戦争に勝つことが至上命題となる。勝つためにはあらゆる手段が正当化 される。真実を捻じ曲げ、隠蔽する事も戦争に勝つためには許されてきた。その裏 でなんと多くの非人道的な暴挙が放置されてきたことか。 戦争犯罪告発こそ内部告発の真骨頂であるということだ。 三つ目に、だからこそ今度のウィキリークスの機密文書公開がこれほど米国政府 に目の敵にされるのだ。 きょう8月1日の毎日新聞によればとうとう米国はFBI(連邦捜査局)による 内部告発者探しとウィキリークス責任者の処罰にまで乗り出したという。 しかし、それは米国政府にブーメランのように跳ね返ってくるだろう。表現の自由 を奪う権力者の動きは間違いなく大衆の怒りを招く事になる。 四つ目に、インターネットによる内部告発と大手メディアの関係がある。そして この事こそ私が一番強調したいことだ。 ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサジン氏(39歳)はこう喝破している。 インターネットの情報は大手メディアがそれを取り上げ、追跡してくれて始めて 影響力を持つ事になる、と。 実際のところ今回の事件も米紙ニューヨークタイムズ、英紙ガーディアン、独 シュピーゲルの三大報道機関が一斉に報じたから世界が知るところとなった。 日本のメディアもそれを見て記事にした。 インターネットが提供する内部告発情報の真偽を確認して、それを国民に正しく 教える事こそ大手メディアの仕事なのだ。 資力も人力も社会的影響力もある大手メディアの使命は、単なる事実の横路並び 報道ではない。調査報道こそ本来の使命なのだ。 アサジン氏のこの言葉は、権力に胡坐を書き、権力を監視するという本来の ジャーナリズムの使命を忘れ、取材能力と執筆能力、そしてなによりも心意気を 失った昨今の大手メディアに対する痛烈な非難であると私は思っている。 了 おしらせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの 特別参加を得て次の要領で行ないます。 13:35-14:00 天木直人「出版の意図を語る」 14:05-14:45 森田実 「特別講演」 休憩 15:00-16:00 天木直人・森田実対談(司会天木) 16:00-17:00 聴衆との応答(司会天木) 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6)
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)