□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月31日発行 第40号 ■ =============================================================== 勝ち目もなく意義もないオバマの戦争 ================================================================ 7月1日から有料メルマガを再出発して一ヶ月がたった。今回で無事7月の 配信を終える事が出来た事をうれしく思う。 7月の最後のテーマは、第一回のテーマがそうであったようにパレスチナ問題 に決めた。パレスチナの公正な和平をこの目で見届ける事が私の夢である。 きょう7月31日の朝日新聞はアフガン米兵の死者が急増し、米兵の自殺者も 最悪を記録したと報じている。 誰が見ても米国のアフガン政策は行き詰まっている。 そんな折から週刊ニューズウィーク誌最新号(8月4日号)が、オバマ大統領 はアフガンの内戦から手を引き、アルカイダ撲滅という本来の目的に集中すべきだ と主張するリチャード・ハース米外交評議会会長の特別寄稿文を掲載していた。 リチャード・ハース氏は2001年1月から2003年6月まで米国務省の 政策企画部長をつとめた。 ブッシュ大統領のイラク攻撃には反対だったが、それを正面から唱えるには 辞職するかクビを切られるかのどちらかしかない。自分はどちらも選ばず、クビ にならない範囲で遠まわしに反対し続けた、そうやはりこのニューズウィーク誌 に寄稿していた人物だ。 その甲斐あってハース氏は2003年7月からめでたく米外交評議会の会長に 収まって今日に至っている。 そんなリチャード・ハース氏が今更何を言おうと鼻白らむが、今回の寄稿は オバマの戦争の行き詰まりを言い当てている。 彼は言う。 01年10月にブッシュ大統領が始めたアフガン戦争は9・11を起こした アルカイダをかくまうタリバン政権を叩くための自衛の戦争だった、と。 そしてその目的はタリバンが崩壊した事でとっくに終わっていた、と。 しかしオバマのアフガン戦争は、ブッシュのアフガン戦争とはまったく異なり、 勝ち目も意義も戦争だ、と。 そしてハース氏はオバマは一刻も早くアフガン戦争を止めて本来の敵である アルカイダとの戦いに専念すべきだと、次のように提案する。 敵はアルカイダであってタリバン政権ではない。タリバンとアルカイダは必ず しも一体ではない。アフガン政権の安定化を優先し、そのためにはタリバンと妥協し、カルザイとタリバンの和解を促す。 それが上手く行かなければアフガンの分割や地方分権へ舵を切る。 それでもアフガンは安定しないかもしれないがそれは米国の知った事ではない。 不安定であってもアルカイダが復活しない程度の状況が管理できればよい。 一刻も早くそう割り切るべきだ、と。 見事な割り切りだ。しかし、ハース氏が言っている事は正しい。 そう割り切らない限り米国は泥沼から抜け出せない。米兵を駐留させて戦う 戦争に勝ち目は無く、アフガンの安定のために米国が引き続き関与しても上手く 行かない、のだ。 しかしハース氏が知ってか知らずか、まったく触れていないことがある。 それはなぜアルカイダは米国を攻撃し続けるのか、ということだ。 まさかアルカイダが米国という国を倒そうなどと思って攻撃していると考える 者はいないだろう。 それはパレスチナ問題だ。 イスラエルがパレスチナを弾圧する限り、それを支持する米国への攻撃を アルカイダは続ける。 逆に言えばパレスチナ問題の公正な解決が実現すれば反米テロ攻撃などは たちどころに無意味になる。テロは無くなる。 日本政府がなすべき事は米国の尻拭いのためのアフガン復興支援ではない。 米国にイスラエルの不正義をやめさせる事だ。パレスチナをこれ以上弾圧する なと言う事だ。 そして、米国にそれを止めさせる事が出来なければ、せめて米国の「テロとの戦い」には日本は関わらないことだ。 これこそが私が2003年に米国のイラク戦争に反対した時に小泉政権に訴えた 事だ。 それはそのまま菅民主党政権に訴えたい事でもある。 了 おしらせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの 特別参加を得て次の要領で行ないます。 13:35-14:00 天木直人「出版の意図を語る」 14:05-14:45 森田実 「特別講演」 休憩 15:00-16:00 天木直人・森田実対談(司会天木) 16:00-17:00 聴衆との応答(司会天木) 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6)
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)