□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月24日発行 第31号 ■ =============================================================== 米国に乗っ取られたアセアン地域フォーラム ================================================================ 昨日23日にベトナムで開かれたアセアン地域フォーラム(ASEAN REGIONAL FORUM)についての報道が23日の各紙を埋め 尽くしている。 しかしその記事を読んだ国民の果たして何人が、今回のARFの意味する 事を正しく理解しているだろうかと思う。 今回のARFは一言でいえば米国によるARFの乗っ取りであり、米国に よる露骨なアジア不安定化外交であったという事だ。 もともとARFは1990年代のはじめに、アセアンが中、日、韓国など に呼びかけて、アジア地域における紛争予防と信頼醸成をつくる事を目的 として始まったものである。 ARFこそ日米同盟に替る東アジアにおける地域的集団安全保障体制へと 発展させていくべき、平和のための会議であった。 当時私はマレーシアの日本大使館に勤務してそれを見てきた。 しかし、それから20年近くの間に、参加国が米、EU、ロシアなどに広がり、 その中身がどんどんと骨抜きにされていく。 それどころか米国の安全保障政策がゴリ押しされるあまたある国際会議の 一つとして形骸化されていく。 そして今度のARFは、クリントン国務長官がでしゃばって、もっぱら韓国 哨戒艦爆破事件と核開発をめぐる対北朝鮮批判に終始した会議に終わったのだ。 詳しい事をここで書く余裕はないが、たとえば南沙諸島領土問題である。 このような問題こそARFで真剣に論議して地域の安定化に向けた方策を模索 すべきテーマであった。アジア諸国の手によって中国に自制を求めるべき問題 であった。ところがほとんど議論なく過去の繰り返しでお茶を濁している。 アジアの安定などにまるで興味のない米国のクリントン国務長官は次のよう に語ったという。 「米国は領土問題については中立の立場だ。武力行使のない外交的な解決方法 を支持する」(7月24日東京新聞)。 イスラエルのパレスチナ武力占領を認めておきながら、よくぞ言ったものだ。 その米国が、今度のARFで最も強く主張したのが韓国哨戒艦を「爆破」した 北朝鮮に対する名指しの非難と制裁だ。 国連安保理でさえもなし得なかった事をARFで行なおうとした。 結果として米国はARFを対立の場にしてしまった。 対米従属を競いあう韓国と日本を引き連れた三カ国連合と、北朝鮮及びそれを 擁護する中国との間に分断してしまった。 韓国哨戒艦爆破事件は、かりにそれが北朝鮮の攻撃で行なわれたとしても、 それは朝鮮戦争の延長線上にある局地戦争の中で行なわれたものである。 今度の爆破事件ばかりがあたかも北朝鮮の一方的な攻撃のように強調されるが、 在韓国連軍という名の米軍が常に北朝鮮を監視し、南北朝鮮の間で局地戦争が これまで断続的に繰り返されて来た事を知っている国民は少ないに違いない。 冷戦後20年たった今でも朝鮮戦争は一時休戦状態なのである。 急ぐべきは南北朝鮮の和平であり国交樹立なのである。 日本はなぜ米国のアジア分断作戦の尻馬に乗るのか。 米中対立の構図の中に巻き込まれる愚を冒すのか。 ARFは北朝鮮外相も出席する貴重な国際会議であるのに、どうしてARF を使って北朝鮮との話し合いの場を持とうとしなかったのか。 この素朴な疑問に見事に答えてくれる記事を7月24日の朝日新聞に見つけた。 岡田外相は、「日朝関係の打開策を考えるべきだ」として当初ハノイで北朝鮮 外相との個別会談を模索していたというのだ。 ところが米国の反発をおそれる外務官僚が、「行き詰まっている北朝鮮 状況を考えれば、何ら得るものが期待できない」と反対し、岡田外相がスゴスゴ と引き下がったという。 これが岡田外相の政治主導による外交の実態なのだ。もって瞑すべしである。 了 ≪メルマガに関する問い合わせは、info@foomii.com へ直接ご連絡願います≫ お詫びの言葉 日付と配信番号に混乱があるとのご指摘が複数寄せられています。これは 一日に二つのテーマで配信することもあって生じたミスだと思います。 ご容赦下さい。 それから誤字・脱字が目立つというお叱りがあり、これは弁解の余地なく 今後更に注意したいと思います。 猛暑により注意力散漫になったと思ってご宥恕願います。 本当のところは書く事に精一杯で、それをもう一度読み直す時にエネルギーが うせてしまう事にあります。 しかしそれは何の言い訳にもなりませんから今後は更に注意して配信するように 心がけたいと思います。 お知らせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの 特別参加を得て以下の通り行ないます。 当日のプログラムは以下の通りです。 13:35-14:00 天木直人「出版の意図を語る」 14:05-14:45 森田実 「特別講演」 休憩 15:00-16:00 天木直人・森田実対談(司会天木) 16:00-16:00 聴衆との応答(司会天木) 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6)
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)