□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年7月20日発行 第25号 ■ =============================================================== 米海兵隊訓練の徳之島移転断念スクープが意味するもの ================================================================ 7月20日の読売新聞が一面トップでスクープを掲載した。 それは、5月末に日米間で合意したはずの「米海兵隊訓練の一部を 鹿児島・徳之島へ移転する」という方針を、日本政府が白紙に戻す方針を 固めたという記事である。 その理由として、読売新聞はこう書いている。 「・・・厳しい財政事情を背景に、歳出を抑制するよう菅首相が大号令を かける中、米軍基地問題でも例外なく見直しを打ち出す必要に迫られた事が 大きい・・・地元説得のメドが立たないことも、財政当局を説得できない 理由となっている・・・」 この理由は一見もっともに聞こえる。嘘ではないだろう。 しかし本当の理由はもっと根深い。 米国が徳之島移転を決して歓迎していないからだ。 米国の無理難題に日本が振り回されているのだ。 もともと米国は徳之島の如き辺鄙な場所に訓練場所を移転することには 消極的だった。 それを、沖縄負担軽減を最優先する鳩山政権が内政上の理由から思いつきで 徳之島分散を口にした。 それなら日本側で米国の言うとおりの施設整備を整えろと米側が要求した。 十分な合意のないままに日本側は5月末の日米共同声明を急いだ。 「沖縄県外への移転を拡充する」という表現をとりつけ、具体的場所として 「徳之島」明記をすることには成功したが、米側は「適切な施設が整備される こと」という条件を明記させることを忘れなかった。 この曖昧な合意は、来年度の予算要求までにははっきりさせなければならない。 おりから参院選挙と民主党政権の敗北による政治不在である。 すべては官僚に丸投げだ。 選挙や政局とは無関係の日米外務・防衛官僚たちは、日米合意の実施のため の協議をずっと重ねてきた。 しかしその協議は下っ端官僚の間の協議であるから、米国の一方的な要求を 日本が飲まされるだけの協議である。 年に数回あるかないかの訓練のために総額1000億円にも上る整備費など、 さすがに日本国民は許さない。 官僚から報告を受けた菅直人政権の首脳は、参院選の惨敗と国民の批判の前 にさすがにこんな無駄遣いを認めるわけにはいかない。 これが読売新聞のスクープ記事の背景である。 鳩山首相はもとより菅直人首相にとっても普天間問題は命取りになりそうだ。 民主党の代表選挙とか政界再編などといった内政上のどの問題よりも真っ先に、 8月中には辺野古沖代替施設の建設工法決定の期限が来る。 ただでさえ沖縄住民の反対があるのに、徳之島一部移転が白紙になった事に よりすべてがまた沖縄に皺寄せされる。沖縄の怒りはいやます。 読売新聞の記事は「政府は本土にある自衛隊基地の活用を再検討する」と 書いているが、そんな事を強行すれば菅政権は頓死だ。 日米同盟堅持の方針を続ける限り、いかなる政権も、誰が首相に なっても、日本は米国の圧力に潰されることになる。 日米同盟から自立しないかぎり日本の政治はいつまでたっても不安定だ。 国民のための政治は永遠に実現しない。 今度の徳之島移転断念は、5月末に決めた日米合意をいとも簡単に破ることが できる事を証明した。 この機会に菅民主党政権は日米合意を白紙に戻し、沖縄県民の声に耳を傾けて 米側に沖縄からの撤退を求めるべきだ。 そうすれば国民は菅政権を見直す。日本に安定政権ができる。国民のための 政権ができる。 簡単な事である。 了 ≪メルマガに関する問い合わせは、info@foomii.com へ直接ご連絡願います≫ 出版記念会のお知らせ 「さらば日米同盟」の出版記念講演を、政治評論家の森田実さんの ご参加を得て以下の通り行ないます。 森田さんとの打ち合わせで当日のプログラムは以下の通りとなりました。 13:35-14:00 天木直人「出版の意図を語る」 14:05-14:45 森田実 「特別講演」 休憩 15:00-16:00 天木直人・森田実対談(司会天木) 16:00-16:00 聴衆との応答(司会天木) 日時 8月8日(日) 午後一時開場 場所 赤坂区民センター大ホール 港区赤坂4-18-13 地下鉄銀座線・丸の内線 赤坂見附駅 A出口徒歩10分 大江戸線・半蔵門線 青山一丁目駅 4番出口徒歩10分 参加 無料(予約の必要はありません。直接会場へお越し下さい)。 (連絡先:春田 090-2415-7617 u12u9lo6@image.ocn.ne.jp ユー12ユー9エルオー6) 講演会の概要については次のURLを参考にして下さい。 http://d.hatena.ne.jp/Takaon/20100702
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天木直人(元外交官・作家)